きれいな放物線
なんか無性に書きたくなって書いてしまいました。
即興で書いたのでいつも以上に誤字脱字があると思いますが楽しんでいただければ幸いです。
シュートは弧を描き、きれいにリングへ向かって沈むはずだった。
――ガシャン!
ボールは少し手前のリングの縁に当たり、大きく跳ね返って前原の手元に戻ってきた。
これで6球連続、あいつも集中力が大分切れてきた。
無理もない、練習後に「500本シュートイン」。それを始めてから今日で一週間、試合へ向けての練習もいよいよ佳境に入り、こいつの疲労もそろそろピークだ。
そんな時、俺がかけてやる言葉はいつも同じだ。
「ほら、集中しろよ!
こんなんじゃいつまで経っても帰れねぇぞ!」
俺がそう言って前原にボールをパスすると、あいつは少し面倒くさそうな顔をする。
だがしかし、それでも何も言わずに黙々とシュートの本数を稼いでいる。
午後9時30分、やっとシューティングが終了した。
俺、長谷川進太郎は、某高等学校男子バスケットボール部のマネージャーだ。
そして、俺の前には同期で選手の前原隼人がいる。
俺らの高校は俗にいう中堅校、平たくいえば、強くもないし弱くもない。
だが今年は調子がよく、県内でベスト4に残った。学校新聞なども、『インターハイ初出場に期待』と、誰もが期待している程だ。
そしてそのインターハイ初出場の鍵を握っているのはこの前原だ。
前原の役割を一言で言うならば『クラッチシューター』。
零度からのシュートはまずはずさない。
しかし、体力がないのと体が細いのが欠点で、ディフェンスはあまり上手くない。
そのせいでスタートには入っていないが、試合の要所では確実に決める高い得点力で、周囲からはエースと期待されている。
「いつも付き合わせちまって悪いな」
突然、前原が俺にそう言ってきた。
素っ頓狂な顔をする俺に構わず、前原は話を続ける。
「お前だってさ、ホントは試合出たいだろうし、もっと練習もしたかっただろうしな」
ああ、そういうことか。
おーけー、理解した。
こいつは俺が怪我してマネージャーになったことを言ってるんだな。
なにもこいつが気にすることじゃない。
こいつが怪我させたわけじゃない。
あれは単純な俺の不注意、こいつはなにも関係ない。
だから俺は前原に言う。
「なに言ってんだ。
そんなこと言ってる暇ががあったら、今のシュート率、1%でも上げとけ」
そして俺を全国に連れていけ。
最後にそう言った。
前原は「そうだな」と言って、別の話題を振ってくる。
途中コンビニによってフライドチキンを食った後、俺たちは別れた。
県予選当日、決勝戦。現在俺たちのチームが5点差でリードしている。
バスケの試合の5点差なんて、点差じゃないが、時間もラスト4分を切った。
このまま行けば勝てる。みんなの調子も悪くない。
俺がそう思っていた時、それは起きた。
――――ピー!
周りから一斉に響く歓声の中、俺らがだけが呆然としていた。
ここで相手チームのスリーポイントシュートが入り、その上こちらのファール、相手にフリースローまでやらせてしまった。
これが入れば、1点差。
シュートは当然のようにリングの中央を通り、堪らず監督がタイムをとる。
ファールしたやつは5回目で退場、代わりに前原が入る。
あと2分、正直この流れで1点差は負けムードだ。
前原がゴール下からコートへボールが入れると、やはりキツイディフェンスがガンガンに当たってくる。
流れがあるとはいえ相手からすればまだ負けているのだ、必死にもなる。
それでもなんとかこちらが一本シュートを決める。
3点差、残り1分26秒。
まだ油断はできな――
前原がマークしていた選手が、ゴールを決めた。
スリーポイントだ。
周りからはまたしても歓声。ウソだろ、おい。
これで同点、残り56秒、俺たちは、次のオフェンスでは得点することができず、だらだらと時間だけが過ぎる。
残り15秒、遂に相手チームが逆転。
タイムアウトはもう使いきった。
このオフェンスが失敗すれば、俺たちの夏は終わる。
あと10秒、7秒、5秒、……
最後にボールを持ったのは、前原。
場所は、スリーポイントラインのさらに1メーター後ろ。
もらうと同時に跳び上がったあいつは、そこからボールを手放した。
――――時間が、止まった。
ボールはきれいな放物線を描き、まるでリングに吸い込まれるようにゴールを通過した。
同時に、試合終了のブザーがなる。
静寂の次に今まで聞いたこともない音が会場中に響き渡る。
――ワアァーーー!!
勝った。やっちまった。あいつ、やっちまったよ!!!
俺は選手たち一人ひとりに激励の言葉をかける。
みんなありがとう。よくやった。
中には泣いてるヤツもいてどついたりしたが……
そして最後、俺は前原に声をかける。
「やってくれんじゃねぇかよ!」
たった一言、俺がそう言うと前原は笑顔で言った。
「これで、また一緒にバスケできるな」
俺はその時、目頭が熱くなった。
馬鹿野郎、俺まで泣いちまったじゃねえか。
その姿を見て復讐とばかりにどついてくる選手。
――――また、バスケができるか……
そうだ。俺たちの夏は、これから始まる。