・青色の友人【解説】
※前回のお話の解説です。短編の時にはありませんでした。
□◇始めに◇□
結論から言うと、語り手の火宮健太という少年は、今日死ぬ人の死因が色となって見える能力を持っています。
ですが、色で表せない死因で今日亡くなる人には、語り手の能力は発動しません。
語り手が、これまで自分の能力に気付かなかった理由は、以下の二つの可能性が高いです。
・そもそも身近に死ぬ人がいなかった。または、前述の理由で、語り手の能力が今日の今日まで、発動しなかった。
・この能力が発現したのが、今日もしくは最近だった。
これらを踏まえた上で、作中で語り手に起きた現象を再び見ていきましょう。
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■◆解説◆■
まず、語り手は友人の田中水輝に、海へ行こうと誘われました。そして、その瞬間から、語り手はミズキの顔が青色にぼやけたと独白しています。つまり、この時点で今日ミズキは死ぬ運命にありました。
前述した通り、語り手の能力は今日死ぬ人の死因が色となって見える能力です。青色、海……これらの単語から、連想される死因は何でしょうか。
はい、もうお分かりですね。
溺死です。
ですが、その後、語り手はミズキの顔を青色にぼやけていないと独白しました。これは、語り手が図らずも、今日ミズキが海へ行くことを阻止したから――ミズキが死ぬ運命を捻じ曲げたからです。
次に、場面は語り手の自宅へと移り変わります。語り手は母親の顔と、鏡越しに映った自分の顔が赤色にぼやけていると独白しました。すなわち、語り手の母親と語り手は死ぬ運命にあります。
この時、語り手は母親の顔と自分の顔が赤色にぼやけていることに、驚いています。
――何か、不自然に思いませんか?
語り手が〝部活が休み〟だと独白している時点で、語り手が学生で、中学生以上なのは確実です。
朝に、同居している母親の顔を見ないなんてことあるのでしょうか。絶賛思春期中の語り手が、学校に行く前に、鏡を見ないなんてことあり得るのでしょうか?
というか、そもそも思春期関係無く、語り手が鏡を一度も見ないなんてことは、考えられません。洗顔、歯磨き、トイレ、お風呂……など、語り手が鏡を見る機会なんていくらでもあります。
ということは、少なくとも語り手が鏡を最後に見た時点では、語り手の母親と語り手は死ぬ運命ではありませんでした。
何かが原因で、語り手の母親と語り手の運命が捻じ曲がったんです。ここで、語り手と母親の会話を思い出してみましょう。
語り手の母親は、こう言いました。
語り手の父親が、立派なサツマイモを貰ってきたと。
そして、それを今日の夜に、天ぷらにする予定だと。
赤色、サツマイモの天ぷら……いや、正確には天ぷら油でしょうか。
――これらの単語から、連想される死因は一体何でしょうね?
さらに、語り手は未だ自分の能力に、一ミリも気付いていません。むしろ、この数少ない情報で気付きようが無いでしょう。
つまり――。