諦めないゾウ
そのあたりをふよふよ浮かんでいた死神は、猛烈なピンチの気配をかぎつけて、視線を向けていた。
そこには一匹のゾウがいた。
「ぜったいに諦めたりしないぞぉぉぉ!」
そのゾウは、諦めが悪い。
どんな事でも一生懸命。
だから諦めないゾウなのだ。
他の動物達が簡単に諦めるような事でも、長いこと挑戦し続けていた。
特に今回はかなり、そうだった。
「自分にできない事は人に任せた方がいいんじゃない?」
体が小さくて、重いものがはこべなかったとあるアリは、ゾウを見てそう言った。
「頑張ってもできなかったら悔しくないの?」
対象が高すぎて木のぼりができず、木のみがとれない昆虫は、像を見てそう言った。
「その時間で、他の事がいくつもできるのに」
狩り上手の鷲は、ずっと諦めないでいるゾウに向かってそう言った。
諦めないゾウは答える。
とっても悪い、狩猟者から逃げ続けるゾウは答える。
捕縛魔法とか、攻撃魔法とか、トラップとか、使役魔物とかを放ってくる死神もにっこりな鬼畜な密猟者から。
「諦めたら死んじゃうし、君達に助けをもとめても応えてくれないし、諦めたら命の最後だから他の事なんてできないんだよっ!」
生きるためのゾウの逃走は続く。