表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

プロローグ1 異世界転生した親父は、やりたいことして生きる

 俺の親父は日本生まれの、平凡な技術者。

 ただ、大学卒業後はアメリカで就職し、サーバー関係のメンテナンスを中心に働いたそうだ。


 親父曰く、

「日本のペラペラの給料で働いていられるか、俺は海の向こうでビッグに稼ぐんだ」

 とかなんとか宣って、海の向こうへ旅立って、そのまま住み着いてしまった。



 そんな親父は、雷が鳴り響く悪天候の日に、とある企業のサーバーの保守点検をしていた。


 厳重に守られた建物の中までは、雷の音もしないが、外では雷鳴が轟き、まるでこの世の終わりのような天気だったそう。



 そんな天気の中、サーバーの保守点検をしていたら、運悪く雷が建物近くの電線に落下。

 過剰な電流が電線を伝って流れ、それがメンテナンス中のサーバーにまで流れ込んだ。

 作業中だった親父は、そこで感電死してしまった。




 死んでしまった親父だが、次に目覚めると、そこは神が住まう天界だった。


 天界には、十二単じゅうにひとえを着た女神様がいた。


 もう一回言っておく、十二単だ。



 その女神は名乗った。


「私は天照大神。あなたたちヤマト民族が崇める、日本の大御神です」

 と。



「引きこもりの大御神様ですか」


「ムキーッ、ひ、引きこもりじゃないもん!この前2068次引きこもりから脱して、今は人界の企業で、人間のふりして働いているんですからね」


 神秘さなんてゼロ。

 図星をさされて、プンプンと怒る女神。




 それはともかく、引きこもりの大御神様は、天界にいると知り合いの神たちがうるさすぎて、また引きこもりに戻ってしまいそう。

 なので、神がいない人界で、人間のふりして働いて、脱引きこもりを達成したとのこと。


 神様同士の関係は知らないが、神は神で、色々と人間関係……いや、神関係が複雑なようだ。



 そんな駄女神大神様は、現在は『なろう』って企業で、紅一点のアイドル社員をしているとのこと。


「はあ、神様も普通に働いているとか、世知辛い話ですね」


「そうなんですよ。それに最近アメリカであった雷が原因で、会社のデータを委託している企業のサーバーが壊滅して、そのせいで1週間ほぼ徹夜……」


 そのあと、ヨヨヨと泣きながら、愚痴を話し始める駄女神。

 ただの企業勤めの人間と変わりない愚痴で、ストレスが溜まりまくってる。

 それを親父は聞かされる羽目になった。



 ただ、気になる部分が多すぎる話だ。


「アメリカで雷?」


「そうそう、ゼウスとトールって神なんですけど、あの2柱が、アメリカにバカンスに行ってヒャッハーしているとかなんとか、ツイッターで呟いていて。

 ……クッ、引きこもりの私に、バカンスなんて羨ましくなんてない。

 ……羨ましくなんてないんだからねー!」


 駄女神様は、常時ダメダメオーラ全開だ。


「ゴ、ゴホン、今の話は忘れてください」


「は、はあっ」


 あまりの駄女神ぶりに、あきれ果てる親父。



 ただ、この話で察してしまうものがある。


「もしかして俺の死因って、ヒャッハーしていた神のせいですか?」


「ええ、そうです。察しが早くて助かります。

 異教の神とはいえ、我ら神のせいであなたは死んでしまったのです。そんなあなたを憐れんで、私があなたを再び生かしてあげましょう」


「はあっ」


「反応が薄いですね」


「そもそも自分が死んだ実感が、ないもので」


「そうですか。普通こういう時は、『もしかして異世界転生、ウワッホーイ』とテンションが上がるはずなのに?」


「……」


 駄女神が首を傾げるが、あまりにもなろうに毒されている。

 人間でなく、神の側が。


 親父は呆れて駄女神を見るが、その視線に気づく様子のない駄女神。



 その後もなんだかんだとあったものの、地球の神のせいで死んだので、親父はテンプレよろしく、来世は異世界で新たな生を受ける、異世界転生を果たすことができた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ