ずるいずるいというのはどうして妹が言うのか? うちは弟と妹がいつもずるいずるいという、でも妹より弟のほうが可愛げがあるかもしれない。なんせ妹に婚約者を奪われて婚約破棄されてしまったのですから…
私には双子の弟と妹がいる。
二人ともずるーい、ずるいというのが口癖だ。
まあ弟のほうは笑って許せるが、どうも妹のほうが腹が立つ。
妹のほうは私のドレスやアクセサリを、お姉さまずるいーといって欲しがるからかもしれない。
弟はおやつをよくずるーいというのだがかわいいもので、己の分をいつも譲ってもこんなものかと思う。
「……私は王太子殿下の婚約者として王宮に行きます。だからクリスは跡取りとしてきちんと勉強すること、そしてクレアは適齢年齢になったら婚約者が決まるようにきちんと勉強すること」
私は二人に言い聞かせます。だけど膨れる妹と、うわーん出ていかないでと泣く弟。
12歳にしてこの違いは何でしょうか。
私はきちんと勉強しなさいよ! と言い残し王宮に向かったのですが。
「私は真実の恋人にであった、だから婚約を破棄してほしい」
「え?」
私は2年後に殿下にこの一言を宣言されました。しかしどうして? ええ、王宮に出入りしていた妹がどうも殿下を誘惑したらしく、真実の愛の相手は妹でした。
「さすがにこれは……」
14歳といえば適齢年齢ですわ。油断していました。
私はどうしましょうと思っているうちにあれよあれよと荷物をまとめられ追い出されました。
「お姉さま申し訳ありません。殿下がどうしてもって!」
ええあのわがまま娘は、グレードアップしてました。私にごめんなさいと泣きまねで謝罪し、そしてクリスが呆れたように見るのも後目に王宮に私と入れ替わりで行ったのです。
「……あのバカ、あそこまでやるとは思ってなかった、ごめん、姉上」
「私が甘すぎましたわ」
私は弟の頭を撫でて、あれはああですからというと、僕が何とかしてみる! とクリスが言うのです。
「え?」
「見てて姉上」
にやりと笑うクリスの笑い方は、どうもクレアよりたちが悪いもののようで、私は本当にいいですからと念押しをしました。
仕返しをするなら自分でします! と。
しかし……。
「リナリア、クレアが王宮で失態をやらかしたせいで、婚約を破棄された。二度も婚約破棄をされた娘を出した公爵家として、お叱りを受けてしまったよ……」
「え?」
私は侯爵の家の跡取りとして教育を今受けていました。クリスが跡取りを辞退したんで、私が女侯爵になることになったのです。
勉強で忙しく、復讐なぞ考えている暇がなかったのですが。
「王妃様の悪口を触れ回り、陛下のそのあた……まあそれを賓客の前で暴露し、殿下に恥をかかせたらしい。うちの家は連座にはならないがお叱りを受けてな」
そういえばクリスの姿が見えませんが……侯爵の家の跡取りなんかより魔法使いになりたい! とあまり言うのでお父様が許可したのですが。
魔法学園入学の準備をしていたと聞いていますが。
「ただいま姉上! あいつ辺境送りになったらしいね」
にこにこ笑いながらクリスが帰ってきました。学園の入学準備に時間がかかりすぎだとお父様に怒られていましたが。
「クリス、あなたもしかして……」
「あはは、ばれてた?」
にっこりとクリスが笑います。私が予想した通り、クレアの格好をして王宮を歩き回り、あらゆる失態をやらかしたそうです。
「あいつ嘘つきなのは、割とみなに知れ渡っててさ、うそです。といっても信じてもらえなくて、あははははは」
まああの子は嘘つきですし、言い訳が好きですしね。
でもこんな方法は稚拙ですわと私はクリスを窘めます。
「連座にならなかったからよかったものの、稚拙すぎますわ」
「姉上ならどうしたの?」
「折を見て、あの子の男癖の悪さをつきつけてやろうとは思ってましたわ。記録魔法を家にしこんでましたし」
「へ?」
「本来は、あの子が自分の失敗を人に押し付けるのが腹が立って仕込んだものでしたが、出るわ出るわ。あの年齢で男……はあ」
「その手があったか!」
私たち姉弟って、根性がやはり悪いのが似てましたわね。まああの子もある意味根性が悪かったですが。私は魔法使いになりたいのは本当? と聞くとうんと答えます。
「ならよし! 学園に行ってきなさい!」
「あいつ、辺境から逃げ帰ったりしないかな」
「一応、お父様にお願いをして監視をつけてもらいましたから」
「姉上……」
「迷惑をこれ以上かけてほしくないので」
私はさらっと言い切ります。容赦なんぞするわけがないですわ。
自分の罪を思い知るがいいとクスクスと私は笑ったのでした。
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