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恋は珊瑚色。~佐原編~

作者: 春川

処女作、恋って何色だろう。の続編です!この作品からでも楽しめるのでぜひ読んで行ってください!

俺は、ずっと前から相沢のことが好きだ。


相沢かほ。小中と全て同じクラスで、高1になった今も同じクラスだ。


相沢とは小学校の頃は放課後も毎日遊ぶくらい仲が良かった。


中学に行くと「みんなの前ではかほじゃなくて相沢って呼んで」とお願いされ、相沢と呼び始めた。でも、2人で話すときは前と同じくかほと呼んだ。


俺は小学校の頃から相沢のことが好きだ。でも、向こうは『友達として』好きだと思っている。


今まで何度も告白のチャンスはあった。…俺は全部自分で潰してしまった。女々しい感情で。


今更言っても無駄だろうな、と思うけど、諦めきれない。でも、無駄…なんだよ。お似合いだ、2人は。


俺の親友、小波は確実に相沢のことが好きだ。そして、相沢も小波のことが好きだろう…。


「なぁ佐原」


ぼうっとしていたら小波がいつのまにかそばにいた。あぁ、もう帰りか、早いな。


「ん?」


「恋って何色だと思う?」


小波が恋愛関連の話をするなんて珍しいな。

恋の色…?つまり俺は相沢との思い出の色を言えばいいのか…。


_________________________


小2の頃、図工で「宝物」を描いている時だった。

じいちゃんからもらった金の時計を描く俺は、重大なことに気づいた。『金色絵の具がない!』どうしようと焦った俺は、当時前の席だった相沢にダメ元で声をかけた。


「かほ!金色絵の具…ある?」


「ごめんね、ない。」

相沢の答えに俺は「そっかぁ…」と肩を落とした。


(たく)、ちょっとパレット貸して」

俺は突然の言動に驚いた。でもかほなら何かいいことしてくれそう、とも思った。


「な、なに…?いいけど」


「おっ、ありがと」

そう言うとかほは俺のパレットをひょいと取り、自分の絵の具を出したり混ぜたりして1つ色を作った。


「…きれい…」

パレットを返された俺は、作られた色を見て声をあげた。綺麗。まるで輝く金の粉みたいだ。


その頃から、俺は相沢のことを意識するようになった。


________________________


「俺は、金色、かな」


「へぇ…、相沢が聞いてきてさぁ」

やっぱり相思相愛なんだよな。それだけで決めることはちょっと安易な考えかもしれないけど。俺の記憶は消してしまいたい。


話変えよ。空気重い。…俺の中での…


「そういや小波の初恋の話いいよなー!2人で写真撮ったんだろ?」


「おう…照れるなぁ…写真は今でも持ってるよ?俺の永遠のヒーローだからな。」


小さい頃、小波がいじめられているのをその女の子は助けてくれたらしい。ピンクの服を着たヒーロー。いつもそう言っていた。なまえは多分あいちゃん…らしい。


あ、ついでに小波の好きな人を確認して吹っ切ろう…。


「ちなみに今の小波の好きな子は?」


「あ、相沢…。気遣いとか、優しさとかが好き…。俺今週中に告るからな、よろしく」


あぁ、やっぱりな。だろうな!これで吹っ切れるわ…告る勇気尊敬するな…。思い切り応援した方が自分のためだし応援したい。よし、言おう。


「うまくいくことを願ってる。頑張れよ!」


「おう!ありがとな!じゃ、また明日な〜!」


小波と別れた後、俺は重い気持ちに襲われた。


前から思っていたけど小波は俺が相沢のことを好きって気づいてないよな、相沢と同じく鈍感。だからお似合いだ…。自分で発して自分で嫌になる。これで、終わったんだよな…俺の長い長い初恋は。


はぁ…。初恋があっけなく終わり、少し驚いたけど…。恋って意外と諦められるものだな。もう潮時って神が告げてたのかな。



家へ帰り宿題も終わり一息ついていたところに、俺の携帯が鳴った。


ん?あ、相沢からだ。


「もしもし、かほちゃま何の用でちゅか〜」


「もしもし、かほちゃまは相談をしたいんでちゅよ〜」


いつもの俺らの電話パターン、赤ちゃん言葉だ。こういう時間を過ごしていると、辛いことも忘れられる。


「…真剣に聞いてね。私ーー」


こちらも告白の相談かなぁ。やっぱり俺の予想は当たってた?


「小波くんのことが好きなの」


「知ってる」

俺は即答してしまった。


「…?!それなら…話は早いね」

かほは一瞬驚いたように静かになったが、すぐに話を再開した。自分の好きな人知ってるって言われてそんな早く切り替えられるって…侮っちゃいけないなぁ。


「告白するの、明後日」

ふぅん…やっぱり…。俺は感情さえ感じなくなったような気がした。


「頑張るから…ね…よろしく、ね、応援、してね」

ぶちっ。


電話が、切れた。…それだけ?言いたかったのは…。


その日の夜は、あまり眠れなかった。


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


そして、翌日。朝休み、教室に響いた言葉。


「好きです!付き合ってください!」


案の定、小波と相沢だった。


もう?!早いなと思うと同時に、本当に終わったんだな、とも思った。


「はいっ!喜んで〜っ」


うう〜っ、と相沢が涙ぐむ。幸せそうでなによりです。お邪魔虫の俺が退いて良かったよ。


これは俺がここで行けば「みんな幸せ!」なエンドになるんじゃないか?…表面上は。

よし、行こう!



「2人とも良かったな〜!俺は2人から相談を受けていたから知っていたけどな!」


「佐原っ!ありがと〜っ!」


俺は、これでいいんだ。物語でいえば主人公の親友ポジ…。いや、実際にそうだからな。しょうがないんだ…。



________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_________ ̄ ̄ ̄ ̄


そして、放課後。部活も終わり、小波に声をかけられた。


「佐原、今日はありがと〜、帰ろ」


いつもなら一緒に帰るけど…今日は、そんな気分になれない。


「ごめん、俺ちょっと用事あるし先帰ってて」

ほんとに用事はあるから嘘はついてない…と、思う。


「ふ〜ん、佐原が用事って珍しいな。じゃまた明日」


小波が去り、教室の人も減ってきたところで、俺は旧図書室へ向かった。


まぁ用事ってのは、穴場スポットの旧図書室で落ち込むっつーこと。 旧図書室には、たまに悲しいことがあった時行く。基本的にどの時間帯も誰も使ってないし、本も人気はない(っていうかそもそも存在を知られてない…)だけど面白い。


つかつかと歩きながら、俺は思い出したんだけど…

旧図書室がなくなるという噂がある。ただの噂だと思うだろ?俺もそう思ってた。でも、この間全校集会で「どうするかを各自考えなさい」って言われたんだ。


 旧図書室を使っている人はほぼいないし、存在さえ知らない人もいる。確実に旧図書室はなくなるだろう。


…俺が好きだったものが、どんどん消えて、変わっていく。それは仕方がないことで、俺がどうかして止められることでもない。


分かっていても、悲しくなる。これが、虚しいと言うのか。


カツカツカツと静かな廊下に足音が響く。本当に俺しかいないんだな、この近くには…。


新図書館に対し古びていて、粋な看板。

「図書館」

他の人はダサいとか言うけど、この落ち着く感じが俺は好きなんだ。



ふぅ…。俺はパイプ椅子に座り机につっぷした。なんかもう色々リセットしたい。


考えているうちに目に熱いものがこみあげてきた。視界がぼやける。

……花畑で、俺とかほが手を繋いで笑いあっている。楽しそうだなぁ……


「おーい」その声で目が覚めた。俺は寝ていたんだ、いつのまにか。なんて夢を見ていたんだ…。

もう忘れたいのに…。


いつのまにか空から日が消えていた。満月が辺りを照らしている。


どのくらい寝ていたんだろう。時計を見ると、18時30分を示していた。教室を出たのが18時くらいだったから…。30分も寝てたのか…。


というか「おーい」って誰が言ったんだ?もしかして落ち込みすぎて幻聴が聞こえたとか…?


その時、俺の前にふっと女子の顔が現れた。

…あ、この子知ってる。


1年でありながら170cmでスタイル抜群。顔もモデル顔負けの小顔で可愛いという…。同級生はもちろん、先輩からもモテモテな石黒華(いしぐろはな)だ。


そんな彼女が、何故ここに?


「あ、コーラ買ってきたから飲もー?」

そう言って彼女は俺の首にコーラをこつん、と乗せた。

俺はたじろぎ、コーラを受け取った後

「え、えーと」

ともごもごしてしまった。


彼女は俺の言葉を聞いて、

「あ、大丈夫だよー、あたしの分も買ってるし安心して」

と向かいの席に座った後もう1つのコーラをクルクルと回した。


「石黒さん…だよね、えっと、俺他人に奢ってもらうのは嫌っていうか申し訳ないし…」

しかも今まで何の関わりもなかった石黒さんに、だよ?


でも石黒さんは、

「いやいや、あたしがやりたくてやってる訳だからほんと気にしないで」

と手をひらひらと振った。


「じゃあ、飲むわ」

俺はまだ躊躇っていたが、じゃあ飲むか、とコーラのキャップをひねると、爽やかなプシュッという音がした。


俺ら2人はコーラを飲みながら、静かにお互いを見ていた。

「綺麗な瞳だな」俺は心の底からそう思った。


そんな中、口火を切ったのは石黒さんの方だった。

「佐原くん、好き」


突然の出来事に俺は驚き、また静かになってしまった。

「さすがに…冗談だよね」


「冗談だと思うよね…忘れて…」

石黒さんは顔を手で覆って言った。

だって…俺と石黒さんの接点なんてないもん、仕方ないじゃん。


「そういえば、相沢さんと小波って付き合ったんだってね」

うん。でももう俺には関係ない話だよ…。

「うん、それがどうかしたか?」


石黒さんは驚き、

「どうかしたも何も、あたし含め皆佐原くんと相沢さんが付き合ってると思ってたんだけど!」

とまくしたてた。

はぁ、そうですか…としか俺は言えなかった。


すると、石黒さんは机をバン!と叩き、

「佐原くん自分がかっこいいって気づいてないでしょ?!」

と言った。


「だって俺誰にも告られたこともないし付き合ったこともないし自分がかっこいいなんて思わないよ!」

思ったことを言っただけだ、俺は。

それなのに石黒さんは…。


「だーかーら!あたしは佐原くんが好きって言ってるでしょ?!佐原くんは相沢さんのことが好きだったのに小波と付き合っちゃってあっけなく終わったとか思ってるんでしょ?!」


まくしたてる石黒さんの言葉に驚き、俺は同じようにまくしたてた。

「なんで俺が相沢を好きって知ってるんだよ?!」


「見たら分かるもん!!バレバレだよ!!相沢さんと小波が鈍感すぎるだけだから!!」

はー…。バレてましたか…。周りの人にはバレてたのに2人にだけ知られてなかった結果がこれか…と俺は今更ながら納得した。


「そうか…」

俺は頭を抱えてため息をついた。


「だ、だからっ!」

石黒さんはまたバンッ!と机を叩き、大きな声で言った。

「あ、あたしと付き合ってくんない…?」


突然の出来事に俺はまたあっけに取られ、静かになってしまった。告白されるのなんて初めてだし、それが石黒さんだしさ…。


「ま、まぁ…友達…からなら…?」

俺は石黒さんの顔を伺いながら言った。


すると石黒さんはぱあぁと顔を輝かせ、

「と、友達になってくれるの…?」

と嬉しそうに言った。


そ、そんな喜ぶとは…。


「ってことは佐原くんにお弁当作ったりしてもいいのかな…夢にまで見た…!」

石黒さん、心の声なんだろうがめっちゃ声に出てるぞ…てかなんかすごい好かれてる…。


「あ、あのさっ!後1つ、言いたかったことがあって…」

俺は首を傾げ、

「なんだ?」と聞き返した。


「泣きたかったら…と、友達だし、あ、あたしの前では、泣いてもいいと、思うよ…」

たどたどしく、石黒さんは言った。


なんか急に思い出してきた。あの相沢と小波の嬉しそうな笑顔。「佐原、ありがとう」という言葉の重み。


いつのまにか、ツーと涙が頬を伝っていた。

俺は自分で驚き、

「ご、ごめ、情けないよな、こんなの…」

と慌てて言った。


でも石黒さんは、「ううん」と首を横に振り、

「あたし友達だから!遠慮しないで!このハンカチ使って」

とハンカチを差し出した。


俺はほっと安心し、

「ありがと…」

と礼を言った。


このハンカチの色…綺麗な色だなぁ…

サーモンピンクの濃い色みたいな…うーん、ちょっと違うか?聞いてみるか。

「このハンカチの色って、何色?綺麗な色だなぁと思って」


石黒さんは、よくぞ聞いてくれました!というように、

「この色ね、珊瑚色って言うの。綺麗だよね!分かってくれる人全然いなかったけど、佐原くんがそう言ってくれて嬉しい…」

と微笑んだ。


可愛い。相沢の優しい感じじゃなくて、あどけない笑顔が、可愛い。なんか包み込みたくなる可愛さ。って…自分で言っといてだけど気持ち悪いな、俺。


俺は『珊瑚色』のハンカチで涙を拭き、もう一度石黒さんに礼を言った。


「石黒さん、今日はありがとう。石黒さんのおかげで心が軽くなった」


石黒さんはまたぱぁぁと顔を輝かせ、

「ううん!っていうか、友達なんだし石黒さんじゃなくて華って呼んでよ!」

と言った。


俺は少し躊躇ったが、

「じゃあ、は、華って呼ぶな…!」

と勇気を出し言った。


すると華は…(って、やっぱ恥ずかしい…)

「佐原くんのことも…た、拓って呼んでいいかな」

と恥ずかしそうに呟いた。


俺は「下の名前が拓ってことも知ってるのか…?!」と驚いたと同時に、嬉しくもあった。

「い、いいよ。友達、だしな!」


「ありがと、拓!」


華は満面の笑みを浮かべてそう言った。


________________________


ーーー1ヶ月後。


相沢とは相変わらずラブラブな小波が、また聞いてきた。


「なぁ佐原、恋って何色だと思う?」


俺は、「また?!」と驚いたが、堂々と、

「珊瑚色!」と答えた。


読んでくださり、ありがとうございます♪

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[気になる点] 男ばかりの学校でしたので、余計に感動します。僕にもこんな想い出がほしかった…。 [一言] おもしろかったです。
[良い点] 物語の展開が良かった [気になる点] 最後の方が話が長くなっているので少し読みずらかった [一言] おもしろかった
2021/04/04 14:06 らいてぃー
[良い点] 前作と違う視点で話が進み面白かった。 [一言] 相沢が残酷やなぁと…でもそのお陰で佐原は次の恋にいけたからよかった。
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