第2話 塔の街トゥール
心地のよい温かさの中、時より吹く風に春の匂いを感じつつ、草原を楽しそうに飛んでいる魔法使いがいました。
「うわー!!すごい村の外はこんなに綺麗な場所があったのですね!」
遠くには、てっぺんにまだほんのりと雪化粧が残っているほど高い山!麓には色とりどりな木々!空には飛龍も飛んでますよ!お母様にも見せて上げたいなあ〜
「ジェルベラー前見て飛ばないと危ないよお...」
「わかっていますよーアルブル」
そう私ジェルベラは、精霊であるアルブルと共に旅に出たのです!旅はまだ始まったばかり!ワクワクが止まりません!
んーそれにしても街はまだですかねー結構飛んできたのですが...お腹空いてしちゃいました。
「ジェルベラ!遠くに大きな塔が見えるよ!」
「ふむふむ...あれはたしかトゥールという街ですね」
大きな塔の周りを囲むように栄えていった街だと聞いたことがありますが、あれほど大きな塔とは...塔のてっぺんは見えませんね。
「早く行こうよジェルベラ!」
「そうですね、お腹もすきましたし少し飛ばしますよ?」
街に近づくと門が見えてきました。あそこで門番さんに街へ入る許可をいただくのですね。
「名前と出身を教えてください」
「名前はジェルベラと申します。出身はルージュ村という小さな村です」
「わかりました。あと、あなたは魔法使い様ですね?すいませんが街の中ではほうきの使用は御遠慮ください。」
「どうしてほうきを使ってはダメなのですか?」
「実は、あの塔を作るのに大量の魔力が使われたようで塔に近づくほど空気中の魔力が不安定になるのです」
空気中の魔力が不安定になり飛ぶのが難しくなるのですね...なるほど
「わかりました。ありがとうございます!」
「いえ、楽しんで行ってください!では、どうぞ!」
ふぅーやっと街に入れました!にしても近くで見るとますますでかく見えますね...
「....っとまずはご飯にしましょうか」
んー何が名物なんでしょうか?聞いておけばよかったですちょっと後悔。
ん?あれはなんでしょう?塔の形をしたパンですかね?
「すいませんーこれはなんという食べ物ですか?」
「お!お嬢ちゃんこの街は初めてかい?これはな、塔の形をしたパンの中に果物や蜂蜜が入ったこの街の名物トゥールパンだ!」
「美味しそうです!私甘いものは大好きです!」
「おー!それならぴったしだ!ナイフで真ん中を切ると上から蜂蜜がとろけて果物の爽やかな甘みに酸味と蜂蜜のとろける甘さが絡み合ってもう絶品よ!」
すばらしいです!こんなに美味しそうなものがあるなんてトゥール恐るべし...ですね
「じゃあこれにしますね!」
「毎度!お嬢ちゃん初めてみたいだし少しまけとくね!」
「ありがとうございます!」
凄い!パンは少しサクッとしててナイフで綺麗に切れます!それに上から琥珀のような綺麗な色をした蜂蜜がとろけだして色とりどりの果物が宝石のように輝きます!場所によって味に違いが出てとても面白いです!
「美味しぃぃぃぃ!」
「....いいなあ、ぼくも食べてみたいなあ」
「アルブルは食事はどうしているのですか?」
「僕ら精霊は空気中の魔力を吸収するんだよ。だから食事は必要ないの」
勿体ないですね...そうだ!
「ねえアルブル、杖になった時みたいに人にはなれないの?」
「んーなれるけど僕が人の姿になってる間ジェルベラが魔法使えなくなっちゃうよ?杖ないし」
「食事中くらいいいんじゃない?」
「わかった。じゃあ変身するよ?」
と、アルブルがいうと杖が中に浮き大きく光り出した
少しして 光が収まりジェルベラが目を開けると...
「どう...かな...?」
「か、かわいい!女の子だったの!?」
人の姿に変身したアルブルは、ジェルベラの手のひらほどの大きさになり、サラサラで綺麗な金髪に緑のドレスを身にまとっていました。
精霊に性別はないんだけど、ジェルベラが喜んでるしいいかな?
「初めて変身する姿の時はちょっと時間かかるけどもう大丈夫!杖にも人間にもすぐなれるよ!」
「それ早く言って欲しかったです...周りから見たらずっと私が一人で喋っているように見えるんですから...」
「ごめんごめん!じゃあ普段はこっちの姿でいるね?」
「...はい」
「お姉さんも魔法使い?」
アルブルと食事しながら話している途中同じ歳くらいで身長は少し自分より低いけど濃いめの青髪に引き締まった表情から大人っぽさを感じる女の子にいきなり声をかけられました。
はて誰でしょう?
「はい魔法使いのジェルベラと申します」
「よかったあ〜!魔法使い同士の出会いって滅多になくて!っと失礼、私は魔法使いのラメールと申します」
ラメールと名乗った魔法使いは大人らしさを演じていたかったのか一瞬緩んだと思うとすぐ引き締まった表情をした。でも少し耳が赤いような?
「えっとラメールさん?それでなぜ私に声をかけたのですか?」
「はい。実は私ある目的があってこの街に来たのですが...1人ではどうしようもなくって優しそうな同じ魔法使いの方を探してたんです」
なるほどそれで私に声をかけてこられたのですね。優しそうな人だと思われたのはうれしいですが...なぜ魔法使いだと分かったんですかね?
「ジェルベラ...さすがに杖と話してたりほうき持ってたら魔法使いだと思われると思うよ?」
「あ、そうでした...もっと早く人の姿になっていてくれたらよかったのに」
「えーとそちらの小人さん?はどなたですか?」
「あ、ラメールさんこの子は小人じゃなくてアルブルっていう精霊なんです」
「そうでしたかそれは失礼しました...って精霊!?」
「そうそう僕は精霊。で、君の目的ってなんだったの?」
「スルーできる内容では無いのですが...まあいいです...実はこの街の近くにある森に珍しい動物がいると聞いて見てみたいなと思いまして」
「「珍しい動物?」」
「はい。なんでも翼の生えた馬がいるとか」
「本で読んだことがありますね、たしかグリフォンという名前だったような?」
「そう!それです!ですが広い森の中、空から探す訳にも行かず歩いて探していたのですが全く見つからず...」
「なるほどそう言うことでしたか...分かりましたグリフォン探し手伝います!私も見てみたいですしね!」
「いいんですか??見ず知らずの私のために??」
「はい!同じ魔法使いとして困った時は助け合いです!」
それにお母様と約束しましたしね!困っている人を助けると。
「ありがとうございます!で、では早速明日の朝からでも大丈夫でしょうか?」
「分かりました、明日の朝街の門の前でいいですか?」
「はい!では明日!」
と、話に区切りが着くと少女ラメールは嬉しそうにどこかへ走り去って行った。
興奮すると子供っぽくなりますねとジェルベラは微笑みながら見送った。
「アルブルすいませんそういう事なので明日は朝から出かけますよ?」
「大丈夫!グリフォンかー楽しみだね!」
「はい!では宿に行って明日に向けて早めに休みましょうか」
「そうだね」
やっと見つかりました...思ったより宿が遠かったです...
この街塔から離れるほど居住区、近くなるほど店や宿が増えていくのですね。
宿を探していたらすっかり遅くなってしまいました。
「すいませーん一泊いくらですか?」
「一泊なら銀貨2枚だね。名前をここに書いて」
「はい銀貨2枚とジェルベラっと」
ジェルベラは鍵を受け取ると部屋に直行しました。
「疲れました...お風呂お風呂っと」
もうお風呂に入って寝ちゃいましょう。明日は早いですし少しでも休んで魔力貯めておかないと。
「んー気持ちいいです!アルブルー?あなたお風呂は?」
「僕はいいです...杖に戻っておきます...」
お風呂嫌いなんですかね?こんなに気持ちいいのに勿体ないです。
その後、明日のことを想像しながら鼻歌交じりにお風呂に入っていたジェルベラは、のぼせそうになるまでお風呂に入り続けました。
「ふー温まりました!それではそろそろ寝ますか」
「アルブル寝ますよ?」
「うん、明日は朝から杖のままいるよ。グリフォンって結構大きいらしいから気をつけるんだよ?危ない時は逃げる。大事だからね?」
「うんわかった。それじゃおやすみアルブル」
「うんおやすみ」
こうしてジェルベラとアルブルそれにラメールの3人はグリフォンに会うため森へ出かけることになるのでした。
すいません区切りは悪いかもしれませんが塔の街トゥールとグリフォンでわけわけします!ジェルベラが杖と話し続けるのもおかしいのでアルブルは普段は人間の女の子の姿になっています!じゃあなんで最初から人間にしない!と思われるかもですが魔法使いと言えば杖!その杖に精霊が変身するってなんかかっこよくないですか!
という私のロマンです笑
ではでは!最後まで読んでいただけるとありがたいです!感想もお待ちしております!