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午後3時30分、六葉町交番にて
日勤で入っている啓介にとって勤務時間は残り1時間30分。仲間二人がパトロールに出かけている中、一人交番で資料に目を通しながらペンを走らせる。
今日のところは一段と穏やかな一日である。今朝に老夫婦が道を聞くために交番に訪れに来たが、今日交番に来た人はその二人だけ。事件の連絡もない。
啓介にとって違和感のあるほど平和な1日であった。
「よし、この資料へのチェックはもう済んだし、今日は何も無ければこのまま帰宅になるのかな。」
そんなことを考え、長時間椅子に座り固まった体を思いっきり伸ばす。
しかし、啓介は思い出したかのように時計に目をやり、「あっ」と一言声を発した。
「忘れてた!今日あいつ来るんだっけか。裏の仮眠室変な臭いになってないか...?」
啓介は昼食を食べた後に片付けてないことをふと思い出し、立ち上がり仮眠室の方へと向かおうとした。
その瞬間交番の窓つきの引き戸がガラガラと開いた。
「けーちゃん!たっだいまぁ!学校終わった!あーそーぼー!」
その声の主は扉の前から思いっきり啓介のジャンプをし、抱きつこうとした瞬間に思いっきり腹に頭突きを入れる。
「うぅー...」
悪気は全くない頭突き。しかし唐突にきた鳩尾への一撃は、鍛えている啓介にとってなかなかの破壊力である。
「わかった...。わかったから。ことり、ちょっと待って。」
抱きつく少女を振り払おうとするも、子供に対して大人の力は流石に出せない。大人気ない。
抱きついてる少女は自分の従兄弟のことり。啓介はことりにすごく懐かれており、こうして啓介の交番勤務のタイミングを計って啓介に会いに来る。
「ねぇねぇ!けいちゃん!最近出たアプリでさ、高さを競うやつあんの!あれしよ!あれ!携帯貸してくれない?」
と言いながら先ほど資料に目を通していた机に置いてある啓介の携帯を手に取りアプリのインストールを始めた。
「ことり、お前いきなり来てアプリって...宿題はいいのか?学生としてちゃんと勉強をだな。」
「けいちゃん、宿題はね、次学校行くまでに終わらせればいいんだよ。明日学校行くまで時間はあるんだし、大丈夫!」
「いや、でもなぁ...」
正論と言ってしまえば正論。だが、自分のすべきことを先にしなければならないということを啓介は教えなければならないのにと思っているがどう言えばいいか考えている。
「それにさ、けいちゃんもうすぐで家に帰っちゃうじゃん。けいちゃんと遊べる時間は今しかないしー...ね?」
と言いながらニヒッと笑顔を見せることりに啓介は負けてしまった。
「んでね!このゲームはね...!」
と説明しようした時に啓介の携帯に一件の通知が。
“悪魔警報”
「やっぱ、平和な1日はこのままじゃ終わらないのか...。」
「平和な1日...?」
呟く啓介に聞き返すことり。啓介は「いや、何でもない。」と返し、交番に配置されている警察無線に耳を傾ける。
聞き取れた情報は以下の通り
・人型で人間の2倍の大きさ。
・全身黒い肌
・素手で手当たり次第のものを破壊
・場所は交番から車で10分程度
「ことり、行くのか?」
「もちろん!行かなきゃ町がなくなっちゃうからねぇー」
「そうか...今交番の前に人はいないから出て行っても大丈夫じゃないのか?」
「そだねー。じゃあ失礼するよー。」
と言いポケットから取り出したペンダントのようなものを首から下げ、先に付いた石を握って祈るように目を瞑る。
すると凄まじい光がペンダントから漏れ、ことりの体を包む。
啓介は光から目を離すように背を向け、光が止むとことりの方に目をやった。
そこには、巷で噂の魔法少女がそこに立っていた。
全身ピンクと白をベースにしたフリフリの服着た魔法少女。
「気をつけてな。ことり。」
「うん!帰ってきたらアプリの続きだからね!」
交番の戸を開け放ち元気よく魔法少女は飛び出して空に舞う。残された啓介も後を追い、表に置いてある原付に跨る。
啓介は事件現場へと急ぐのであった。
固岩 啓介
23歳 警察官巡査部長
六葉町交番にて勤務2年目である。
基本的には生真面目で正義感が強く警察官としても周囲から尊敬されるほどの人柄である。
ジムに通っているため体が大きい。
ことりの従兄弟