case3
俺は先日村の掟を破り、村を囲んでいる森の外に出てしまった。
その掟のある理由は森の外には魔物が存在しているからだ。
そして、案の定俺は魔物に襲われて命を落としてしまった……。
……はずだったのだが、何故か気が付くと自分の部屋に戻ってきている。
絶対に夢ではないはずだ。
何かが変だと感じ、俺はもう一度森の外に出てみることを決意した。
結果は予想通り魔物に襲われて死んだはずがまた自室に戻っている。
部屋を出てリビングに行くと母親が不思議そうに「あら?今外に出て行ったんじゃなかったの?」などと言っている。
やはり、夢ではないと確信した。
ゲームや漫画だけの作り話だと思っていたが、俺は"伝説の勇者"と言うものなのかもしれない!!
……などと思っていたのも既に70年も前の事……。
昔、あの体験の後に何度も森の外に出てみたのだが、魔物が強すぎて1体も倒すことが出来なかったのだ……。
そして、レベル1のまま時が過ぎて行った……。
あの後、数年してから大人に聞かされた真実は、ワシにとっては地獄の2文字でしかなかった。
その真実とは、ワシの生まれた村は魔王城から一番近い村であり、魔王の奴隷として絶対服従を誓うことによって村人の命が保証されていたと言う事だ。
村の周りにある森は一種の結界……、いや、生と死の境界線と言って良いものだったのだ。
ワシは特殊体質のおかげで確かに戦闘で死んだ場合でも自室で生き返ることが出来る。
……だが、この体質も寿命には勝てないようだ。
その理由として、ワシは毎日確実に歳を取っている。
万が一寿命で死なないとしても不死なだけで会って不老ではない。
既に体力はかなり衰え、かなり昔から剣をまともに振るうことすらできないのだ。
残りの余生は本物の勇者が現れて、魔王を討伐し、世界に平和をもたらしてくれる……。
……そんな日が来ることを心待ちにしながら静かに生きて行こうと思う……。
~魔王城に近すぎた勇者(?)編 Fin~