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【8話】誘拐事件!

初投稿です!

 昼休みはとっくに終わり、午後の授業が始まっている。


 そんな中、俺は正体不明の誰かにどこかの空き教室に連れてこられていた。


 誘拐事件である。

 被害者は俺の.....誘拐事件である!


 じゃあ加害者は.....


「よーし!成功したっと」


 俺を誘拐した犯人が言う。

 悪びれる様子もない安心しきった顔だ。


 とても犯人とは思えないような顔立ちの整った美少女がそこにはいた。



「どういうことだ?宮川」


 俺を誘拐し、空き教室に監禁したのは宮川かおり。

 人気者で、高嶺の花で、完璧超人。

 俺の今会いたくないヤツランキング一位の宮川かおりである。


 誰もいない教室に男女が二人きり。

 それも不釣り合いの男子と女子だ。


 高嶺の花に恋をした普通の男子生徒が、完全に脈無しだと悟り強硬手段に出た。


 そんな筋書きが容易に見えてくる。


 つまり、こんなところが誰かに見つかってしまえば、俺の学校生活だけではなく人生すらも終わる可能性があるということ。


 それはまずい。非常にまずい。


 まあ、今は授業中なので見つかる心配はなさそうだが.....



「驚いた?」


「あ、ああ。まあ、驚きよりも恐怖が勝ってはいるけど.....」


「ふふっ、ありがとう」


 嬉しそうに宮川は微笑む。


 いや、褒めてないが。


「俺に何か用か?」


 宮川が俺を空き教室に監禁。


 理由がまるで分からない。

 人気者の宮川が一般生徒Aの俺になんの用だろうか。

 それも授業中の誰かに見つかる心配が限りなく低いこの時間帯にだ。


「大したことじゃないんだよ」


「大したことじゃないんだったら、今じゃなくても良くないか?今、授業中だぞ」


「いいじゃん!細かいこと気にしてても人生楽しくないよっ!」


 全然細かいことではない気がするのだが、これは俺がおかしいのか?


「君をここに連れてきた理由はたったひとつ」


「ひとつ?」


「そう!聞きたいことがあったからだよ!」


「聞きたいこと?」


「うん。聞きたいことがね。ひとつ!」


 そして宮川は近くの机に腰掛け、言う。


「青山くん、一宮くんに何か言った?」


「何も言ってない」


 俺は咄嗟に嘘をついた。

 宮川がなぜそんなことを聞いて来るのか分からなかったからだ。


 怒っているのだろうか?


 俺が一宮に「何か」を言ったことにより、宮川にとって不都合があった.....のか?


 だから、放課後ではなく授業中という人目がないこのタイミングなのか?


 宮川の表情を伺うが何も分からない。


 いや、さっきから笑顔ではあるのだが.....




 確かに俺は一宮に「話しかけてこい」といった。

 だがそれによって宮川の株が落とされることは無いはず。


 宮川がしたことと言えば、ひたすらに一宮を心配してあげていたことくらいである。

 むしろ、株は上がったのではないだろうか。どんな生徒にも分け隔てなく女神様として。


 つまり、怒る理由はない。


 では、授業中に俺を空き教室に閉じ込めてまで聞いてきたのはなぜだ?

 聞くなら放課後でもいいだろう。


 それは、まさか.....


 確かめなければ。


「どうしたの?青山くん.....。汗すごいよ。」


「な、なんでもない。」


 俺は流れる汗を無視しつつ、口を開く。


「それより、宮川。今の気分はどうだ?」


「え?別に普通かな?」


 宮川は自然に答える。



 よし!怒ってはいない。

 万が一怒らせていた時のために土下座の準備はしていたのだが.....


 宮川はクラスの人気者だ。

 つまり、不況を買ってしまったら俺はすぐにでもいじめのターゲットになりうるということ。


 普通の高校生活を望む俺にとっては天敵以外の何物でもない。


 しかし、危機は乗り切った。


「大丈夫だよ!青山くん。私、怒ってないよ!クラスでのカーストとか、株とか、そんなもの、どうだっていいじゃない!重要なのはここだよ!」


 胸の当たりを叩きふふんと得意げに鼻を鳴らす宮川。


「そ、そうか」


 全て見透かされていた。

 一体俺の心配はなんだったのか.....

 今になって恥ずかしくなる。


 いや、だがこれくらい考えていかなければいつか足元をすくわれるかもしれない。


 普通の高校生は大変なのだ。


「それで?一宮くんに何を吹き込んだのかな?」


「何も言ってないって言っても信じてもらえそうにないな。」


「うん!信じないよ」


「というかホントは俺が何を言ったかくらい想像できてるんじゃないか?」


 さっき、俺の思考を読み切って見せたのだ。それくらいできたとしても驚かない。


「それは流石に無理だよ。席が離れてるもん。分かったのは一宮くんが私に気があること.....くらいかな?」


 あんな露骨なアプローチだ。顔を真っ赤にもしていた。


 そりゃ気づかれるか.....


 一宮、不憫だ。


「というか青山くん。やっぱり何かは言ったんだね?」


 宮川は俺の失言を見逃さない。

 まるで獲物を狩るハンターのようだ。


 はいはい。俺の負けですよ。


「ああ、言ったよ。でも.....話しかけてこいって言っただけだぞ。あくまで宮川のもとに行ったのは一宮の意思だ」


「そうなんだ」


 これは紛れもない事実である。

 あくまで俺は恋のキューピッドとしての仕事を果たしただけなのだ。


「それで?一宮に可能性はあるのか?」


 一応聞いてみる。


「うーん.....なし!」


 即答である。


「私のタイプじゃないかなあ.....男らしくもないし、高身長でもないし、イケメンでもないし、まあ、可愛いんだけどね。あ、でも、あれで女の子だったら一家に一台は欲しいかなあ」


 どうやら宮川のタイプは男らしくて、高身長でイケメンなヤツらしい。

 残念ながら一宮はどれにも当てはまっていない。もちろん俺も。


 だが希望がないわけではない。

 なんでも女の子になれば宮川の家に置いてもらえるらしい。


 それは流石に冗談か.....



 まあ、何はともあれ





 頑張れ.........一宮。

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