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【1話】俺と彼女

初投稿です!

 俺、青山飛人(あおやまたかと)は普通の高校生である。

 嘘だ。普通の高校生が美少女の告白を断るわけがない。

 そう思うのも当然である。


 しかし、ちょっと待って欲しい。


 もし、昨日の告白が本当の告白で俺がそれをOKしていたらどうなっていた?


 おそらくは美人の彼女がいるという噂は校内を駆け巡り、周りからの評価は急上昇、煌びやかで充実したリア充生活を送ることができたはずだ。

 いわゆる薔薇色の学園生活というやつである。


 だけど俺は告白を断った、いやだからこそ断ったのだ。


 俺はそんな学園生活を送るつもりはないし、

 送りたくもない。

 かといって灰色の高校生活を送りたいというわけでもないのだが。


 俺が送りたいのは....


「普通」の日常。


 灰色でも薔薇色でもない、ごく普通の平凡な日常を俺は過ごしたい。


 その日常に彼女は邪魔だろう。ましてやクラスの人気者となれば普通など、かけ離れた生活になるに違いない。

 朝も昼も夜も平日、休日関係なく、彼女と苦楽を共にする。

 ああ、想像するだけでため息が出る。

 そんな日常を過ごしたいとは俺は微塵も思わない。


 俺は平凡な高校生活を送りたいだけの普通の高校生なのだ。









「青山くん。おはよう!」


 朝、登校中の出来事だ。

 聞き覚えのある声が俺の名前を呼んだ。


 嫌な予感がしつつも俺は振り返る。


「え?」


 思わず固まった。

 あまりに予想外の人物がそこにいたのだ。

 二度と会うことはないだろうと思っていた人物。

 昨日の放課後、俺に嘘の告白をしてきた少女、宮川かおりがこちらに向かって手を振っている。


 今一番会いたくない人間に、この朝一番という最悪のタイミングで遭遇してしまった。


「おはよう!」


 聞こえてないと思ったのか宮川は再度同じことを言う。


「お、おはよ......う」


 戸惑いつつも、俺は返答した。


「今日もいい天気!青山くんもそう思わない?」


「ま、まあそうだな」


 気まずい。とても気まずい。

 昨日あんなことがあったのだ。無理もない。

 しかし、宮川にそんなことを気にする素振りはなく......

いや、むしろ昨日よりもイキイキしている気がするのだが気のせいだろうか。


「青山くんって朝、早いんだ?」


 昨日のことは夢だったのではないだろうか、そう思えるほど自然に話しかけてくる。


「そうか?今日はたまたま早起きしただけだ。じゃっ、またな」


 言いつつ、俺は歩くスピードを早め宮川との距離をとった。

 気まずさもあったが、何よりこんなところを他の生徒に見られたらまずいからだ。


「え?ちょ、ちょっと、待ってよ~青山くん!どこ行くの~。一緒に行こうよ!」


 しかし、宮川は慌てるように俺についてくる。

 それに合わせ、俺もスピードを上げる。

 しかし、距離は縮まる一方で......

 すぐに追いつかれてしまった。

 どうやら、宮川は足も速いらしい。


「ふ〜、朝から走るの楽しいね!」


 宮川は笑顔で言う。


「はあ、はぁ、全然楽しくない」


 息を切らしつつ、俺は言った。


「あはは、私から逃げたりするからだよ」


 俺の隣に並び、歩き出す宮川。


「ほら、青山くん。行こう!」


 そう言って宮川は俺に手を差し伸べた。


「それとも私と行くのは嫌?」


 嫌に決まってる。

 宮川のような人気者、それも美少女と登校するなんてこと死んでもしたくない。

 朝一番のこの時間とはいえ、確実に注目されるだろう。

 俺は目立たず普通に生活したい。

 だからこそ、注目を集めることなんてする訳にはいかないのだ。

 いや、もう遅いか......

 既に視線は俺たちに注がれている。

 冷静に考えてみれば当然のことだった。

 高校生の男女が追いかけっこ、なんて注目されるに決まっていたのだ。


「嫌だとしても、一緒に行くよ!だって君、おもしろいんだもん」


 そう言い俺の手を掴み宮川は走り始める。


 初めから選択肢などなかったのだ。


 俺はそれに逆らえもせずただ身を任せることしかできなかった。


 こうして俺は半ば強制的に、宮川かおりと共に学校に登校することとなったのだった。


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