プロローグ
初投稿です!
「好きです。付き合ってください!!」
正直、耳を疑った。
俺では到底釣り合わないような可憐な美少女が告白してきたのだ。
端正な顔立ち。肩まで伸びた黒髪はまさに黒髪清楚と言えるような、そんな少女だった。
彼女は短めの黒髪を揺らし、俺の方を見つめた。
俺はこの少女のことを知っている。
宮川かおり、俺と同じ学校の同じクラスの生徒である。
一言で表すなら彼女は、非の打ち所もない美少女だ。
つまり、俺とは違って目の前に立っているこの少女は人気者、俺に告白するはずのない人間だ。
俺と彼女には接点という接点はなく、今まで話したことすらなかった。
無理もない。彼女は美少女で人気者、俺は普通の生徒なのだ。
そう、そのはずだ。
俺に告白する理由はひとつだって思いつかない。
それも高校が始まって数週間、4月の末、桜の花が散り始める時期だ。
いくらなんでも告白するには早すぎる。
容姿端麗、才色兼備、天衣無縫、そういった高嶺の花へ玉砕覚悟で告白。
それなら俺にも理解は出来る。
ところが相手は俺のような普通の生徒で、告白してきた彼女はその三拍子が揃っていると言ってもいいくらいの美少女なのだ。
告白する側とされる側、逆じゃない?
そう思われても仕方がない。
もしこれが逆だったなら、誰もがなんの違和感もなく受け入れてくれるだろう。
しかし、現実は可憐な美少女が平凡な一般生徒に告白するという意味不明な状況で。
何か裏があるはずだ。
罰ゲームか友達同士のノリか、あるいは両方か。
しかし、だとすれば、ますます俺である理由が分からなくなる。
俺はこの数週間、特に目立つことなく過ごした自信がある。
よく言えば普通、悪く言っても普通。
そんな生活を心がけて送ったはずだ。
嘘でも普通の男子に告白なんてつまらないことをするとは思えない。
しかし今の俺にそんなことを確かめる余裕などあるはずもなく。
夕焼け空の下、こちらを見つめ黒髪を揺らしながら言葉を紡ぐ美少女とただ呆然と立ち尽くす俺。
「へ?」
シチュエーションに不相応で間抜けな俺の声が夕暮れの校舎に響く。
宮川は真剣な眼差しで俺を凝視する。
その宝石のような瞳は早くしろと言わんばかりにこちらをじっと見つめてきた。
俺は覚悟を決める。
心臓は高鳴り、鼓動は加速していく。
今までにもここまで緊張した経験はない。間違いなく人生で一番の緊張だ。
気持ちを落ち着かせる。
俺はゆっくりと深呼吸を数回、そしてやっとの思いで言う。
「ごめんなさい」
宮川は度肝を抜かれたといった感じで目を見開いた。
断られるとは微塵も思っていなかったようだ。
そりゃそうだ。
俺が彼女の立場でもこんな奴に振られるだなんて思わない。
「………………」
「………………」
気まずい空気が流れる。
「………………」
「………………」
何分たっただろう。
一時間か、それとも二時間かあるいは数秒か。
長いとも短いとも感じられる気まずい時間だ。
その空気に耐えられず俺が口を開きかけた、そのとき
「嘘だよ。全部嘘。ごめんね、付き合わせちゃって」
宮川は笑顔で言う。
そして彼女はこの場から逃げるように走り去った。
ひとり残された俺はしばらくそこから動くことができなかった。