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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第10章 練習試合2試合目 船町北VS大阪西蔭 
97/479

第96話 ストレート勝負③

 1番バッターの三浦に対しての初球、黒山は大きく振りかぶるワインドアップ投法で、鶴田が構えるど真ん中めがけて、ただただ何も考えず全力で球を投じた。


(うまい具合に散らばってくれー)


 そう願っていた鶴田の思いは届かず、球は鶴田が構えていたミット通りのど真ん中に向かっていた。


(ど真ん中! これで終わりや!)


 三浦のスイングは、鶴田が構えたミットと同じ高さの軌道上で行われ、タイミングも完璧だった。


(打たれる!)


 そう鶴田が思った瞬間、三浦のスイングから逃げるように球がボール1個分だけ浮き上がった。


「ボン!」


 鶴田は黒山のストレートをキャッチできず、球は胸の防具を直撃した。幸い鶴田のすぐ目の前に跳ね返ったためサードランナーはその場でストップした。


「ストライク!」


(危ねー俺のエラーで試合が終わる所だった。黒山のストレートをキャッチできないなんて初めて黒山とバッテリーを組んだ1年の頃以来だな。それにしても、今のストレートは凄かった。そういえばここ最近、黒山のワインドアップからの全力投球受けてなかったな。ペース配分を考えた抑えめの投球から解放された黒山のストレートは、ここまで進化していたのか)


(球が浮いた? いやいやそんなん物理的にありえんやろ。でも確かに浮いたように見えた。それくらいキレのある球っちゅーことやな。もうボロボロのはずなのにようこんな球投げよるわ)


 三浦はバットを短く持ち直した。


(俺は大阪西蔭のリードオフマン。ストレートしか投げれんピッチャー相手に出塁できひんなんて許されへん)


 2球目、黒山の球はさっきよりも若干内角よりの高めに向かっていた。


「カーン!」


「ファール!」


(俺の全力ストレートに2球目で当ててくるか。さすがは大阪西蔭の1番バッター。ミート力がすごいな)


(くそ、当てるので精一杯や)


 3球目、黒山の球は外角の少し低めに外れた。


「ボール!」


 4球目、今度は外角の少し高めに外れた。


「ボール!」


(追い込まれているこの状況から2球連続で見逃してくるとは。選球眼も半端ない)


(見逃したっちゅうよりも手が出えへんかった。甘いコースだけに絞らんと打てる気がせえへんわ)


 5球目、黒山の投じた球は、真ん中高めのストライクゾーンに入っていた。


「カーン!」


「ファール!」


(くそ、また粘られた!)


(くそ、また捉えられへんかった!)


 そして、運命の6球目。黒山の投じた球は、外角寄りの高めのコースに向かっていた。


「カーン!!」


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