第92話 安達弾VS万場浩二
万場兄弟の兄で右サイドスローの浩一から弟で左サイドスローの浩二に交代すると、左バッターの9番星は、為す術もなく三振に倒れた。
(我ながらようできた作戦やな。右対右、左対左に限れば万場兄弟は無敵や。事実、うちのレギュラーですら最初に万場兄弟と対戦した時はまともに球に当てることすらできひんかったからな。船町北はんからすれば、百瀬や千石以上に厄介な投手かもしれへんな)
9回表2アウト。この場面で左バッターの1番安達が打席に入った。
(さて、そんな無敵の万場兄弟を要しても抑えられるか唯一不安なのがあの1年バッターや。百瀬からはツーベースヒットに加えてあわやホームランの当たりを放ち、うちのエース千石からも形はどうあれヒットを打っている。ここが勝負所やぞ。頼むで浩二)
(もうあのサイドスローから得点を期待できるのは安達しかいない)
それが船町北ナインと鈴井監督の共通認識だった。応援の声にも熱が入る。
「いけ―安達!」
「ヒット打ってくれー!」
「いや、ただのヒットじゃ承知しねーぞ!」
「ホームランだ!」
「ホームラン打ってくれー!」
「ホームランしか許さねーぞ!」
「ぜってーホームラン打てー!」
「ホームラン! ホームラン!」
「頼むぞ安達!」
そんな安達に対する初球は、内角高めいっぱいへのカーブだった。
「ストライク!」
球審のストライクコールを、安達は尻餅をつきながら聞いていた。
(こっわー。背中側からボールが出てくるってこんな感じなのか)
安達にとって、左のサイドスロー投手と対戦するのはこれが初めての経験だった。
(ただでさえサイドスローみたいな変則的なフォームの相手、ピッチングマシンの球筋と違うから苦手なのに、それに加えて左利きだもんな。ほんと打ちづらい)
2球目。浩二は内角高めいっぱいへ今度はスライダーを投じた。
「ストライク!」
安達はまたもや尻餅をついた。
(ダメだ。打てる気がしない。ぶつけられそうで怖い。でもさすがに3回連続尻餅は恥ずかしいよな。逃げるな俺。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……)
安達が自分に何度もそう言い聞かせながら臨んだ3球目、安達は見事恐怖心に打ち勝ちフルスイングをした。
「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」
浩二が投げた球は、大きく外に外れたスライダーだった。
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船町北 000000000
大阪西蔭 00000000
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