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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第10章 練習試合2試合目 船町北VS大阪西蔭 
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第91話 万場兄弟

 今から約1年前。戸次監督は新入生のスカウト候補として挙がっていた選手が出場する大阪リトルシニアの試合映像を確認していた。


(球速もなかなか速いし、コントロールもまあまあええな。変化球もそこそこ豊富やし、全体的にレベルの高いええピッチャーやな。せやけど……どこか突き抜けたもんを感じひんな。甲子園優勝を目指すうちのチームのエース候補としては、若干物足りんな。一応バッティングの方も確認しとこか。おっ、相手のピッチャーごっつ背が高いな。右のサイドスローか。角度のある良い球放るやんけ)


 そのピッチャーこそが、万場兄弟の兄、浩一だった。戸次監督は目当てのスカウト候補のバッティング確認そちのけで、浩一のピッチングに注目していた。


(右バッター相手にはほぼ完璧に抑えとるけど、左バッター相手になるとあっさり打たれがちやな。なかなかおもろい選手や思うたけど、うちにはいらんかな)


 そう戸次監督が考え始めていた試合中盤から、右のサイドスローで投げていたはずのピッチャーが突如として左のサイドスローで投げ始めた。


(一体どういうことや? もしかしてこのピッチャー、両利きなんか? いやいやそんな訳あらへんよな。でもさっきまで投げてたピッチャーと顔も体もフォームもそっくりやし……そうか、双子か! いやー驚いた。利き腕だけが逆でそれ以外ここまでそっくりとはおもろいな。せやけど……)


 万場兄弟の弟、浩二は、左バッター相手にはほぼ完ぺきに抑えていたが、一方で相手が右バッターになった途端、あっさりとヒットを打たれ始めた。


(やっぱりそうか。弱点まで似なくてもええのにな。やっぱりこいつもうちにはいら……いや、待てよ。1人をピッチャー、もう1人をファーストにでも置いといて、バッターごとに守備位置を交代させれば……よし、決めた。2人セットでスカウトや)


 こうして、万場兄弟の兄浩一と弟浩二は、2人揃って大阪西蔭高校に入部することが決まった。


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