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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第10章 練習試合2試合目 船町北VS大阪西蔭 
91/479

第90話 恐怖のサイドスロー②

 8回裏。カットボールの癖を治した黒山の投球に大阪西蔭打線は対応できないままあっという間に三者凡退に抑えられた。


 そして9回表。細田似の右サイドスロー投手に8番バッターの尾崎はあっさりと抑えられた。


(ここまでは想定内。右バッターにあの投手は相性が悪すぎるからな。だがここからは星、安達と左バッターが続く。ここにきて最大の得点チャンスが巡ってきたぞ)


 そう喜んでいた鈴井監督だったが、ここで大阪西蔭からタイムがかかると、戸次監督が鈴井監督の元に向かって話しかけた。


「ちょっと確認したいんですけど、このまま引き分けが続いた場合、延長戦もやりますか?」


「あっ、そういえば決めてなかったですね。うちとしては大阪西蔭さんさえよければやらせていただきたいです」


「それは良かった。うちとしてもこのまま引き分けで終わるのはスッキリしないので臨むところです」


「ただ、帰りの新幹線の時間もありますので12、3回くらいまでが限度ですかね」


「じゃあ12回までということでよろしいですか?」


「はい、それでお願いします」


(まっ、そこまで黒山君の体力が持つとは思えへんけどな)


 話し合いが終わると、戸次監督は続いてファーストの遠藤を万場という選手に交代させた。


(ここにきて守備固めか)


 鈴井監督がそう思ったのも束の間、戸次監督はさらに守備位置の変更を告げた。


「ピッチャーとファーストを交代」


(えーと、つまりファーストに入った選手はピッチャーだったってことか。ていうか新しいピッチャーもでかいな。さっきのピッチャーとそっくりだ。体形だけじゃなくて顔まで似てるな。まるで双子のよう……あれ、もしやこの2人)


 鈴井監督はさっきまで投げていたピッチャーの名前を確認した。


(万場……そして今交代したピッチャーも万場……この2人、本物の双子だ!)

 鈴井監督よりも近い位置から2人の様子を見ていた9番バッターの星は、鈴井監督よりも先にその事実に気付いていた。


(うわーめっちゃそっくり。双子って生で初めて見た。いや、龍谷の清村兄弟も見てるから初めてではないか。正確には一卵性の双子を初めて見ただな。これだけそっくりってことはプレースタイルも同じなのかな? でもそれじゃあわざわざ交代する意味ないよな) 


 そんなことを考えていると、新しく交代したピッチャーが投球練習を始めた。


(うわーマウンドの立ち姿まで本当に瓜二つだ。でもどこか違う気がするな。おっ、やっぱりこいつもサイドスローか。投球フォームも瓜二つ。でもどこか違和感が……あっ、わかった。利き腕が逆なんだ。さっきまでの万場は右で今投げてる万場は左。てことは左対左……やばい、俺打てないかも)


 投球練習の様子を見ていた鈴井監督は、さらに恐ろしい事実に気付いていた。


(今投げてる万場は左で、右の万場もファーストに残っている。ということは、対戦するバッターに合わせて右の万場と左の万場を守備位置を交代させて使い分けられるということか。これって……攻略するの無理じゃね?)

   

      123456789

 船町北  00000000

 大阪西蔭 00000000


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