表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第10章 練習試合2試合目 船町北VS大阪西蔭 
90/479

第89話 恐怖のサイドスロー①

 8回の表。今まで先発していたエースの千石が違うピッチャーに交代したのを見て、船町北ナインの士気は俄然高まっていた。


(ラッキー! 正直千石の球は打てる気がしなかったからな。これでやっと俺にもヒットを打てるチャンスが巡ってきたぞ)


 この回の先頭バッター福山は、やる気満々で打席に向かった。


(このピッチャー、甲子園の映像には出てなかったし初めて見るな。身長でけえし腕もなげーし体格でいうと三街道の細田にそっくりだな。さて、どんな球を投げてくるんだ? まっ、千石や百瀬の球を経験した後なら、どんな球がきても驚かないだろうがな)


 そんな福山に対する初球。細田似のその投手は、三塁側のピッチャーズプレートギリギリの位置から、長い右腕をめいっぱい横に伸ばすサイドスローのフォームから球を投じた。


(うわっ! ぶつかる!)


 右バッターの福山は、自分に向かってくる球に恐怖を感じて体を思いっきり後ろに反らした。


「ストライク!」


(えっ! 今のがストライク?)


 福山が体を反らして球から目を離した瞬間、球は鋭い大きな曲がりをみせ内角ギリギリのストライクゾーンを通過していた。


 2球目。細田似投手の投じた球は、またもや福山の体に向かっていた。


(うわっ! またかよ!)


 福山はまた体を反らして避けようとしながらも、今度は球から目を離さずにいた。


「ストライク!」


(すげー変化量のスライダーだな。ただでさえ角度がエグイ上にこんなスライダーを組み合わせて投げられたらたまったもんじゃねえよ。でも、ストライクゾーンを通過してるなら打てないはずはないよな。恐怖心に打ち勝って思い切って振るしかない!)


 3球目。細田似投手が投じた球は、福山の顔面付近に向かっていた。


(うわっ! 殺される!)


 福山は命の危険を感じ反射的にしゃがみこんだが、球はそこから大きく斜め下に曲がってストライクゾーンの内角高めを通過した。


「ストライク! バッターアウト!」

 

(最後の球はカーブかな。それにしても福山の奴、めちゃくちゃダサかったな。内角球を怖がってるようじゃ、野球はできないぜ)


 そう心の中で福山をバカにしながら打席に上がった6番バッターの新垣だったが、福山と同じような形であっさりと三振に倒れた。


(福山のビビりっぷりを見た時は笑っちゃったけど、その様子を見ていたはずの新垣までこのザマとはさすがに笑えないな。2人共しっかりしてくれよ)


 そう心の中で2人に説教をしながら打席に上がった7番バッターの尾崎だったが、前の2人以上のビビりっぷりをみせながらあえなく三振に倒れた。


(右の横投げからのスライダーやカーブなら白田や水谷の球で慣れているはずなのに、それでもあの怖がりようとは。相当角度や変化がすごいんだろうな。この調子だと右バッターに期待するのは難しそうだな。まっ、幸い次の回では左バッターの星と安達に打席が回る。まだまだチャンスはあるぞ)


(左バッターならチャンスはある、なーんて向こうの監督さんは今頃考えとるんやろうな。そんな甘っちょろい考えが崩れ去る姿を拝めるのが、今から楽しみやわ)


      123456789

 船町北  00000000

 大阪西蔭 0000000


---------------------------------------------------------------


小説の続きが気になるという方は、ブックマークや

下にある☆☆☆☆☆から作品への応援をいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ