第85話 安達弾VS千石聖人③
『この試合は十中八九千石と黒山の投手戦になるだろう』
4回、5回、6回と、両チーム共に無安打無失点が続き、試合前に鈴井監督が話していたこの言葉が現実になっていた。
『そこで今回は1番千石から得点を奪える可能性の高い安達に打席が回る数を1つでも増やすために打順を先頭にした』
7回表。安達にとって千石と3度目の対戦の機会が回ってきた。もしもいつも通り安達を4番にしていたら、7回に安達の打順が回ってくる前に回が終了し、千石は降板。安達との3度目の対戦は叶わないまま終わっていたことだろう。これも鈴井監督の狙い通りだった。
(安達はこれまでの練習試合でも、3打席連続で無安打になったことは1度もない。つまり、この打席は100パーセント打ってくれるはず。期待してるぞ!)
しかし、鈴井監督の期待もよそに安達はあっさりと1ボール2ストライクと1度もバットを振らないまま追い込まれていた。
(いくら安達でも、高校ナンバー1ピッチャー相手には通用しないのか)
鈴井監督だけでなく、船町北ナイン全員がそんな諦めムードを感じ始めていたその時、大きな打球音が鳴り響いた。
「カキーン!!!!」
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安達は4回に見逃し三振を食らって以降、ベンチで目を瞑りながら千石との2打席分の対戦の中で投げられた球を何度も繰り返し思い出していた。
(ストレート……高速縦スラ……曲がりの大きいスライダー……高速横スラ……)
何度も何度も繰り返し思い出す中で、安達はそれぞれの変化球の特徴を整理していた。
(高速横スラ……変化量はピッチングマシンのスライダー中くらい。一見変化する直前まではストレートと全く同じ軌道に見えるけど、よく思い返すと投げた瞬間から微妙に横の変化が始まっていた気がする。曲がりの大きいスライダー……変化量はピッチングマシンのスライダー強くらい。これも高速縦スラと同じく最初から微妙に横に変化していた。この変化を見逃さなければ前の打席のような遅いストレートに引っかけられることもなくなるはず。そして高速縦スラ……変化量はピッチングマシンのフォーク中くらい。この球だけは攻略の糸口が見つからないな。次の打席でもっとよく見直さないと)
こうして臨んだ千石との3度目の打席。初球は内角低めギリギリへの高速横スラ。見逃しストライク。
(やっぱりそうだ。わかりづらいけど、最初から微妙に横の変化が始まっている)
2球目、外角低めにストレート。わずかに低めに外れてボール。そして3球目、外角低めに今度は高速縦スラ。見逃しストライク。
(なるほど。最初に対戦した時は気付かなかったけど、ストレートの軌道と比べるとほんの少しだけ最初の軌道が山なり気味になってるな。これで千石の全球種見極められるぞ)
4球目、千石の投じた球は、内角を抉る高速スライダー。安達は千石が投じてすぐにそう確信してバットをフルスイングした。
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