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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第10章 練習試合2試合目 船町北VS大阪西蔭 
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第84話 カットボール

 安達が千石に2打席連続三振を食らっていた頃、黒山は鶴田にある相談をしていた。


「ちょっと球受けてくれないか?」


「まだ1アウトだぞ。早くね?」


「見てもらいたい球があるんだ」


「それってもしかして……」


「さっき百瀬に教えてもらったカットボールだ」

 

「そんな付け焼刃の球使い物になるのか?」


「それを見てもらうために投げるんだよ。ほら、防具つけて早く準備してくれよ」


「わかったよ」


 鶴田が防具を付け終わった頃、2番バッターの白田がキャッチャーフライを打ち上げてアウトになっていた。


「時間がない。鶴田早く!」


 実はこの白田のキャッチャーフライ、千石の連続奪三振記録を10で止める記念すべきフライだったのだが、そんなことは今の黒田にはどうでもいいことだった。


「じゃあ早速カットボールいくぞ!」


 黒山がそう言って投げたカットボールは、変化する方向が逆なことを除けばほぼ百瀬がさっきまで投げていたカットボールと瓜二つの代物だった。まさかここまでの出来だとは思ってもいなかった鶴田は、キャッチしきれずに後ろに逸らしてしまった球を拾いに行って投げ返しながら言った。


「黒山! お前天才だな。この球は使えるぞ。早速次の回から投げていこう」


 

 4回裏。黒山がカットボールを使い始めたこの回から、黒山無双が始まった。


「ストライク! バッターアウト!」


(何やあのカットボール。球速が速い上にこの鋭い変化。こんなエグイ球隠しとったんか)


「ストライク! バッターアウト!」


(えげつないカットボールやで。こんなもん初見で打てる訳ないやろ)


「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」


(ネクストバッターズサークルから見た以上にやばい球やな。でもこの球、どこかで見たことがあるような……)


 3回まで毎回ヒットを打たれていた黒山だったが、カットボールを投げ始めたこの回からは1人の走者も許さない圧巻のピッチングを続けた。


(3回まではいずれは打ち崩せる思うとったけど、まさかあんな変化球を隠しとったとわなあ。黒山聡太か……要チェックやな。それにしてのあの変化球、百瀬のカットボールに似とるなあ。もしかして、百瀬があいつに教えたんとちゃうやろな? まっ、そんな訳あらへんか)


「へっくしょん! やべ、風邪でも引いてもうたかな。体冷やしてこれ以上悪化せえへんように、しっかり汗拭かんとな」


 その頃別のグラウンドで練習をしていた百瀬は、自分が黒山に教えたカットボールのせいでチームが苦戦していることなどつゆ知らず、黒山からもらった虹スぺのタオルで汗を拭いていた。


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