第83話 安達弾VS千石聖人②
(黒山の奴、あれほどスライダーのコントロールを改善しろと言ったのに、全然できてないじゃないか! なーんて、監督に思われてるかもしれないな。もちろん俺だって改善したいのは山々だ。監督に言われる前からずーと試行錯誤はしてきた。でもなかなかうまくいかないんだよな。それでも今まではなんとか通用してきた。ただ、相手が強豪になればなるほど簡単には見逃してくれなくなる。この際、スライダーはキッパリ諦めて別の変化球を試すか)
4回表。1番バッター安達の2打席目が回ってきた。
(前の打席で千石の持ち球は高速横スラ以外は全部見れた。あの中で1番打ちやすい球はストレートだけど、高速縦スラと途中まで軌道もスピードもほとんど同じだから見極めづらい。となると、唯一球速が遅めの曲がりの大きいスライダーが1番狙い打ちしやすいな)
初球、千石の投じた球は、高めの外に少し外れたコースから鋭く変化し外角高めのストライクゾーンへと入ってきた。
「ストライク!」
(今のが高速横スラか。この球も高速縦スラと同様見極めづらいな。やっぱり狙うは曲がりの大きいスライダーだ)
2球目、内角低めにまたもや高速横スラ。
「ストライク!」
(くそーあっという間に追い込まれた。でも狙いは変えない。あくまで本命は曲がりの大きい横スラ。それ以外の速い球は基本見逃す。もしも打てそうなコースだったらストレートだと決めつけて振りにいこう。高速の縦スラか横スラだったら空振り三振になるけど、この際仕方がない)
3球目、千石の投じた球は、大きく外に外れていた。球速は遅め。
(これは、前の打席で三振を食らったシチュエーションと全く同じ。ここから大きく曲がってストライクゾーンに入ってくるあのスライダーに間違いない!)
安達はそう確信してフルスイングをしにいくも、球は外に大きく外れたまま真っすぐ進んでいく。
(えっ! スライダーじゃねえの?)
安達は慌ててスイングを止めようとするも、間に合わなかった。
「ストライク! バッターアウト!」
(ラッキー。あんな外した球をまんまと振ってくれたわ。監督があの1年には注意しとけっちゅうからどない奴かと思たけど、所詮はまだまだ経験不足のひよっ子やな)
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