第82話 黒山聡太VS千石聖人①
試合は3回の裏を向かえていた。これまで両チーム通じて無失点が続いている。一見互角に渡り合っているようにも思えるが、その内容は全く違った。
大阪西蔭先発の千石は、安達を三球三振に抑えたのを皮切りに、9打席連続三振という離れ業をやってのけていた。
一方船町北先発の黒山は、得点こそ許してはいないものの、初回に1安打、2回にも1安打を許し、三振はまだ1つしか奪えていないという状況だった。
(さすがは大阪西蔭打線。普段から千石の速球を見なれているせいか、俺のストレートにも普通に当ててきやがる。変化球を投げても食らいついてくるし、相当うざいな。唯一の救いは、長打力のある選手が少ないことか)
黒山はこの回、安打を2つ許したものの、何とか得点は許さないまま2アウトまでたどり着いていた。ランナーは2、3塁。ここで迎えるバッターは、ピッチャーでありながら4番を任されている千石だった。
(初回の対戦では空振りの三振に抑えれたけど、かなり鋭いスイングをしていたな。確か千石の打撃成績は、打率が3割くらいでピッチャーの百瀬を除けば大阪西蔭の中では最低。だけど、チームのホームラン数の半分以上を千石1人で占めている。パワーだけ見ればチーム1の実力者。こいつにだけは打たれる訳にはいかない)
初球、内角高めにストレート。千石はフルスイングの豪快な空振りを見せた。
(すげースイングだな。パワーだけなら安達並みかも。だが、当たらなければ意味ねえよ)
2球目、外角の低めにカーブ。低めに外れてボール。
(初回はこれを振ってくれてたんだけどな。もう通用しないか)
3球目、外角低めにストレート。見逃しのストライク。
(いいコースに決まったな。さて、これで追い込んだけどここからどう投げる?)
キャッチャーの鶴田は外角の低めに外れるスライダーを要求した。
(まあそうなるよな。お願いだからこのスライダーで空振ってくれ)
4球目に投じたスライダーは、狙いよりも高めに浮き上がった。その甘い球を千石は見逃さなかった。
「カキーン!!!」
逆方向のライトへの強い打球が飛んでいくもあとひと伸び足りず、外野フェンスギリギリのところでライトの白田がなんとか追いついた。
「アウト! スリーアウトチェンジ!」
何とかこの回も無失点に抑えることができた黒山だったが、鈴井監督は黒山のこれまでの投球に全く満足できていなかった。
(黒山の奴、あれほどスライダーのコントロールを改善しろと言ったのに、全然できてないじゃないか! この試合、今のところなんとか0対0で進んでいるが、そろそろやばいかもな。この流れを変えるには、安達のホームランしかない。安達、次の打席こそ頼むぞ!)
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船町北 000
大阪西蔭 000




