第77話 安達弾VS百瀬剛三④
百瀬は続く2番バッターの白田にもレフト前ヒットを許した。
(1番のバスターもどきに動揺したのか、9回を1人で投げてきた疲れが出てきたのか、はたまたその両方かしらんけどキレも球速も若干落ちてきたな。もしも次の3番にまで打たれてもうたらあの不気味な4番との対戦は避けられへん。ここは何としても抑えにいかなあかん。ようし百瀬、初球からパワーカーブかましたろか)
初球、百瀬が投じたパワーカーブはすっぽ抜けて、水谷のお尻を直撃した。
「デッドボール!」
(最悪や。あの不気味な4番を満塁の場面で迎えてまうとは。しかも今の百瀬の状態はイマイチ。どう抑えにいったらええんや)
悩みに悩んだ川本は、とりあえず外角の低めギリギリにカットボールを要求した。
(頼むから甘いコースの抜け球だけは勘弁してくれよ)
百瀬の投じたカットボールは、この日1番の球速とキレを見せながら川本のミットに収まった。
「ストライク!」
(めっちゃええ球やんけ! ついさっきまでとは別人や。もしかして百瀬の奴、この4番ともう1回対戦するためにわざと手加減してたんとちゃうか? これが本番の大会なら大説教もんやけど、まあ練習試合やし勘弁しといたるわ)
2球目、内角低めへのストレート。
「ストライク!」
(さっきのカットボールといいこのストレートといい対戦する度に速くなってね? もう9回だし1番疲れてるはずなのに……この人すげえな)
3球目、川本は内角高めの厳しいコースへのカットボールを要求した。
(こいつに遊び球を投げても平然と見送られるだけや。ならば百瀬の1番得意なこのコースに全力のカットボールを投げ込んだれ!)
(川本……俺も同じこと考えとったわ)
百瀬が今日のラストボールだと思いながら全身全霊を込めて投じたカットボールは、真ん中の高めに外れたコースから鋭く斜めに変化しながら内角高めギリギリに構える川本のミットへと吸い込まれようとしていた。
(ストライクゾーンに入る。今だ!)
安達のフルスイングが、それを妨害した。
「カキーン!!!!」
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