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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第9章 練習試合1試合目 船町北VS大阪西蔭 
72/479

第71話 百瀬剛三⑤

 6回の表。8番バッターの尾崎に対する初球は、内角低めのカットボール。尾崎は振りにいくも全然タイミングが合わず空振りした。


 (ダメだ。俺のバッティングじゃやっぱり打てない。これならダメ元でセーフティーバントでも狙ってみるか)


 2球目、外角の高めにきたカットボールを、3塁線に転がした。


(やべっ、強すぎた)


 球速の速い百瀬のカットボールの勢いをうまく殺すことができず、尾崎は楽々アウトにされてしまった。


 その様子を見ていたバントの得意な9番の鶴田。


(俺も打てそうにないし、バントの方がヒットになる確率は上がるかも。相手もまさか2回連続でバントしてくるとは思ってないだろうし)


 そう考えた鶴田は、百瀬の初球の真ん中低めにきたカットボールをまた3塁方向に転がした。


(よし、うまく勢いも殺せた)


 しかし、サードの山本は猛烈なダッシュで素早く球を拾うとファーストに鋭い送球をして鶴田を1メートルほど手前でアウトにした。


(奇策のつもりやったかもしれへんけどうちみたいな圧倒的な強い投手がおるチームでは打つのを諦めて2連続でバント攻めされるなんてことは日常茶飯事や。警戒は常に怠らへんで)


 1番バッターの星は、この2つのバント失敗を活かせないかと考えていた。


(2連続もバントで攻められたら、さすがにもうバントでは攻めてこないと考えるはず。こうなったら奇策中の奇策、3連続セーフティーバント狙ってみますか)


 星は初球にきた内角低めのストレートをまたまた3塁方向に転がした。しかし、普通に警戒されていたこともあり、星は楽々アウトにされてしまった。


(打線の弱いチームは大変やな。こんな馬鹿げた奇策に頼るしかあらへんなんて。まっ、せいぜい頑張りなはれや)


 戸次監督の素直な感想だった。


(あいつら、打てないからってバントに逃げたな)


 この後この3人は、鈴井監督からめちゃくちゃ怒られた。


      123456789

 船町北  000000

 大阪西蔭 40000


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