第69話 百瀬剛三④
5回の表。これまでランナーを1人も出せずにいた船町北打線だったが、ここにきてようやくノーアウト2塁というチャンスが訪れた。
(この回、最低でも1点返さないとな。できればヒットを打ちたいが最低でも安達を3塁まで進めたい)
5番で左バッターの黒山は、ライト方向への引っ張る打球を強く意識しながら打席に上がった。
初球、外角低めにカットボール。見逃しストライク。
(速っ! さっきの打席の時よりスピード上がってねえか? 普通に打ちにいったら振り遅れるな。気持ち0.1秒くらい早めにスイングを始めよう)
2球目、内角低めにカットボール。空振り。
(遅っ! こっちの狙いを察知してわざと遅いカットボールを投げてきたな。器用なピッチャーだな。でも狙いは変えない。最後にはまたあの高速カットボールがくるはずだ)
3球目、真ん中低めにチェンジアップ。空振り三振。
(狙いが全部丸見えやで。あんたみたいなわかりやすいバッターはほんまリードしやすくてありがたいわ。さっきの狙いが読めない不気味な4番バッターも少しはあんたを見習ってほしいわ)
6番で右バッターの福山も、安達を最低でも3塁に進めるため逆方向を意識して打席に上がった。
初球、内角高めにカットボール。見逃しストライク。
(速っ! この速さだったら普通に打ちに言っても振り遅れて逆方向に飛んでいきそうだな)
2球目、ど真ん中にストレート。空振り。
(ストレート速っ! 150以上は出てそうだな。まあカットボールがあれだけ速いんだから当たり前か。もう追い込まれちゃったし逆方向がどうとか言ってられないな。とにかく当てにいこう)
福山はもともと短めに持っていたバットをさらに短く持ち直した。
3球目、外角低めにカットボール。ギリギリバットにかすってファール。
(よし、当たった! 次は前に飛ばす!)
4球目、外角の地面スレスレに落ちるチェンジアップ。福山はバットが止まらず空振り三振。
(はぁーダメだったか)
7番バッターの新垣は、自分の実力では普通に打ちにいってもまず打てないということを前の打席で思い知らされていたため、ある大胆な作戦を考えていた。
(外角の高め。俺の1番得意なこのコースにきた球だけを狙いにいく)
しかし、この打席で百瀬が外角の高めに投げることは1度もないまま、新垣はあえなく見逃しの三振に終わった。
「百瀬、ナイスピッチング! ピンチをうまく切り抜けたな」
「ピンチ? そんな場面あったか?」
「ノーアウト2塁は結構ピンチやろ」
「あの打線相手にノーアウト2塁なんてピンチの内に入らんやろ」
「確かにそやな」
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船町北 00000
大阪西蔭 4000
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