第68話 安達弾VS百瀬剛三②
5回の表。この回の先頭バッター安達に打席が回ってくると、百瀬は深呼吸をしてギアを上げる準備をした。
(こいつ、明らかに他のバッターとは実力が全然ちゃう。俺のカットボールを初打席でいきなり当ててくるミート力、そしてどん詰まりながらも外野まで運んだあのパワー、龍谷千葉のレギュラークラスやと思て全力で抑えにいかなやられるで)
初球、外角低めにカットボール。見逃しストライク。
(さっきの打席よりもスピードが上がった? さっきはまだ全力じゃなかったのか。ますます打ちづらくなるな)
2球目、内角高めにストレート。わずかに高めの内側に外れてボール。
(顔面近くの厳しいコースに投げ込んでやったのに避けようともせず平然と見送られてもうた。なんやろうこの不気味な威圧感は。2巡目まではカットボールとストレートしか使わん予定やったけど、そうも言ってられへんな)
そう判断したキャッチャーの川本は、残り2つある百瀬の持ち球の内の1つ、チェンジアップを解禁することにした。
3球目、内角低めにチェンジアップ。見逃しストライク。
(今のはフォークかな? いやチェンジアップか? まあどっちでもいいや。ピッチングマシンのフォーク中の変化を緩やかにした感じと覚えておこう)
4球目、内角高めにカットボール。安達は打ちにいくも捉えきれず斜め後ろに飛んでいくファールとなった。
(このカットボール、140キロ以上出てるな。ピッチングマシンの変化球は140キロが最高だからそれを超える変化球はさすがに打ちにくい。でも、打てない球じゃない)
5球目、外角低めにチェンジアップ。わずかに低めに外れてボール。
(見送り方がホンマ不気味や。結構ギリギリのとこやったのにバットを振りにいく素振りすら見せへんかった。こいつにはストライクゾーンで勝負せえへんと振ってくれなさそうやな)
6球目、川本は外角低めにカットボールのサインを出したが、百瀬のボールは高めに浮いて外角の高めへと向かっていった。
「カキーン!!!」
安達が放った鋭い打球は逆方向のレフト線を破るツーベースヒットとなった。
(百瀬のカットボールは高めに浮いたとはいえスピードも出てたし悪くない球やった。それを逆方向にあの当たり。こいつホンマ不気味や)
(くそー打たれた。全力で投げると高めに浮きがちになる悪い癖が出てもうたな。もっと精進せなあかんな)
(ホームランにしたかったのに一瞬振り遅れて逆方向のツーベース止まりになっちゃったな。もっと修正していかないと)
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