第66話 白田の課題⑤
4回裏。大阪西蔭打線が丁度3巡目の攻撃に入ったこの回、白田は1番バッターの三浦にはスライダーを、2番バッターの田所にはシュートをヒットされ、ノーアウト1、2塁のピンチを招いていた。
(前の回から相変わらずフォーク以外の変化球が狙われてるな。厳しいコースをついても甘い球がくるまでカットされたり投げる瞬間に打席の位置を移動して打たれたりするし、かといってフォークの割合を増やすと今度はフォークを狙い打ちされる。うーん、これ以上どうリードしたらいいんだ?)
鶴田が悩んでいる頃、白田も同じ様に悩んでいた。
(フォークを新しく改良しても、スライダーやシュートを厳しいコースに投げても通用しない。これ以上どうしろってんだ。いっそのことフォークのようにスライダーとシュートも改良するか? いやいやそんな一朝一夕で簡単に改良できる訳がない。このスライダーとシュートをここまでコントロールをつけて投げられるようになるまでどれだけかかったか。昔は全然曲がらなかったり逆に曲がり過ぎてデッドボールとかしょっちゅう出してたっけ。あっ! それだ!)
白田はタイムをかけると鶴田と軽く打ち合わせをした。
(何を相談しとんのかわからんけど、今日の俺はまだまともなヒットが打ててへん。このまま終わる訳にはいかんのや。絶対打ったるで)
密かに闘志を燃やす3番バッターの山本。しかし、タイムが終わったあと戸次監督から山本にバントのサインが出された。
(バントかーい! まあノーアウト1、2塁やししゃーないか)
そんな山本に対して投げられた初球は、外に外れたコースから中に入ってくるスライダーだった。
(外角ぎりぎりストライクゾーンに入ってくるな。ほな初球でキッチリ決めますか)
外角ぎりぎりストライクゾーンに入ってくる。その山本の目測は外れた。白田が投げたスライダーは外角ぎりぎりどころか真ん中まで到達するほどの大きな曲がりを見せた。
(あかーん!)
「カーン!」
山本は予想外の曲がりを見せたスライダーをうまく転がすことができず打ち上げてしまい、キャッチャーフライとなった。
(なんやねんあのスライダー! くそー今日は散々やわー)
(良かったー思ったよりうまくいったな。シニア時代にデッドボールとかワイルドピッチ連発して監督に封印させられたこのスライダー。相変わらず制御できてないけど外角よりを意識して投げればデッドボールは減らせるし、ワイルドピッチもブロッキングのうまい鶴田ならだいたい防いでくれるはずだ)
(何だよこのスライダー! 予想以上に曲がるな。この球でワイルドピッチとかされたら止めるのクソムズイぞ。白田の奴、俺のブロッキングを過信してねえか? まあでもやるしかねえな)
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