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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第9章 練習試合1試合目 船町北VS大阪西蔭 
66/479

第65話 百瀬剛三③

 4回の表。先頭バッターの星は、前の打席で3回も百瀬のカットボールを見ていたため、だいたいの球筋は把握していた。


(今度こそ打ってやる)


 星に対する初球は、外角低めにまたもやカットボールがきたが、星はバットが出なかった。


「ストライク!」


(ダメだ。あんなに速くてキレのいいカットボールをこんな厳しいコースに決められたらわかってても打てない。甘いコースにくるのを待つか)


 2球目、百瀬の投じた球は内角へと向かっていく。ここからカットの変化をするとデッドボールになりそうな球だった。


(危ない!)


 星は体を反らして避けようとするが、百瀬の投じた球はそのまま変化することはなかった。


「ストライク!」


(ここにきて普通のストレートか。カットの残像がこびりついて思わず避けてしまった。ダメだ。打てる気がしない。かくなる上は……)


 3球目、百瀬が球を投じる瞬間、星はバントの構えに切り替えた。百瀬が投じた球は不運にもバントをするのが1番難しいとされる内角高めへのカットボールだった。


「カーン!」


 バントした球は後方に打ち上げてしまい、スリーバント失敗となった。


(クソ―全然ダメだった。でもバットには何とか当てられた。まあバントだけど。次こそはヒット、いやせめて前に打球を飛ばすぞ)


 2番バッターの白田は、事前にある作戦を立てていた。


(さっきの回、俺はフォークやフォーク以外の球に狙い球を絞られた結果ヒットを何本も打たれた。今度はこっちがやり返す番だ。あのカットボールは正直右バッターの俺にとってかなり打ちづらい。だからストレート1本に狙いを絞る。これで百瀬を攻略してやる)


 初球、内角高めにカットボール。見逃しストライク。


 2球目、内角低めにカットボール。見逃しストライク。


(焦るな焦るな。さすがに3球も連続でカットボールは投げてこないだろう。次こそは打つ)


 3球目、百瀬の球は外角に向かっていた。


(一か八かだ!)


 白田が振ったバットは、無常にも空を切った。


「ストライク! バッターアウト!」


(3球連続でカットボールかよ。くそー完全に作戦が裏目に出たか)


 3番の水谷は、前の打席で見た百瀬のカットボールを思い浮かべてはその球をホームランにするイメージトレーニングを繰り返していた。


(俺は打てる。俺は打てる。俺は打てる……)


 初球、外角にきたカットボールに対して、水谷は待ってましたとイメージトレーニング通りのフルスイングで迎え撃った。


「カキーン!!!!」


 気持ちのいい打球が響き渡ったのは、水谷の脳内だけの幻だった。


「カーン!!」


 打球はぼてぼてのファーストゴロ。船町北打線はこの回も1人のランナーすら出せずに終わった。


      123456789

 船町北  0000

 大阪西蔭 400


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