第62話 安達弾VS百瀬剛三①
(あの龍谷千葉相手に1点差やったっちゅうからどんなもんかと思て呼んでみた訳やけど、思っていた以上に大したことなさそうやな)
1回の攻防を終えての戸次監督の素直な感想だった。
2回裏。4番バッター安達の打席が回ってきた。安達は春季大会以降の練習試合9試合でもホームラン12本、打率は5割越えと相変わらず打ちまくっていた。しかし、まだ公式戦では春季大会に3試合出ただけということもあり、まだまだ安達は無名の選手だった。
(これがおたくの4番バッターかいな。1年が4番て、よっぽど人材不足なんやなあ可哀そうに。百瀬の球にちょっとでも当てれればええけど。頑張りやー)
安達に対する初球は、内角の低めへのカットボール。見逃しストライク。
(これがカットボールか。えーと、ピッチングマシンのスライダー弱と中の間くらいで若干斜めに落ちていく感じかな)
2球目、今度は外角高めへのカットボール。安達は振りにいくも空振りしてしまう。
(変化するタイミングがギリギリだから見極めるのが難しいな)
3球目、外角へストレート。安達は打ちにいきそうになるもギリギリのところでバットを止めた。外に外れてボール。
(もしも今のがカットボールだったらギリギリストライクゾーンに入ってたな。危ねー)
4球目、百瀬は左バッターの安達の内角ギリギリを抉るカットボールを投じた。
「カーン!!!」
安達の打球音は明らかに詰まらされたのがわかるものだった。
(おー当てた当てた。やるやんかあの1年。おめでとさん。まあ内野フライやけどな)
しかし戸次監督の予測に反して安達の打球はなかなか落ちてこないままセンター方向へと伸びていき、やっと落ちてきた頃にはセンターの定位置まで届いていた。
(完全に詰まらされながらあそこまで飛ばしおった。あの1年、只者やないで。要チェックやな)
その後、5番バッターの黒山、6番バッターの福山と百瀬のカットボールに手も足も出ないまま連続三振に打ち取られた。
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