第61話 白田の課題②
3番バッターの山本に対する初球は、内角ギリギリのストレート。
「ストライク!」
「おい白田! まだまだコース甘いぞ!」
「おう!」
2球目、左バッターの山本の体にぶつかる軌道からギリギリぶつかるかぶつからないかというコースへ変化する内角へとシュート。
「ボール!」
「ナイスボール! いいコースだ!」
(デッドボールすれすれのこの球がナイスコースやと? こいつ俺にぶつける気かいな。随分好戦的なバッテリーやな。まっ、これくらい本気できてくれへんとつまらへんし大目に見てやろか)
3球目、今度は内角高めの顔面付近へのスライダー。少し内側の高めに外れてボール。
(前言撤回や。顔はあかんやろ顔は。そろそろ仕留めたろか)
4球目、白田は4球続けて内角へ球を投じる。山本はそれを見た瞬間1塁方向に体をずらしながらスイングを始めた。
(内角ギリギリの球でもこれで一躍ど真ん中の絶好球に変貌や)
山本のバットが球を捉える直前、球が下に変化した。
「カーン!」
山本の打球はキャッチャー前で打ちつける形で大きくバウンドした。
(よし、打ち取った!)
そう確信した鶴田だったが、3塁ランナーの三浦は山本が体をずらした瞬間にスタートを切っていたためバウンドした球を鶴田がキャッチした瞬間には三浦が本塁のすぐ目の前まで迫っていた。
(帰らせてたまるか!)
鶴田は三浦に向かってダイブしながらタッチしにいくも、三浦はそれをうまくかわしながら回り込んで本塁ベースを左手でタッチした。
「セーフ!」
(くそっ!! せっかく白田が良い投球してくれたのに。さすがは大阪西蔭、走塁までそつがないな)
悔しがる鶴田を尻目に、白田は山本に対して最後に投げたフォークボールに手ごたえを感じていた。
(これだよこれ! 俺が投げたかったフォークは。この感触を忘れないうちにもっと投げておきたい)
その後白田は、鶴田のリードに対して何度も首を振ってはフォークボールばかりを要求した。その影響もあってか白田はこの回9番バッターの百瀬をフォークで打ち取るまでに4失点を喫した。だがその結果とは裏腹に、白田の表情はどこか晴れ晴れとしていた。
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