第60話 白田の課題①
1回の裏。先発の白田は先頭バッターの三浦に対してスライダーとシュートで横に揺さぶるピッチングで2ストライクまで追い込むも、その後はカットで粘られ逆に3ボールまで追い込まれてしまった。
(さすがは大阪西蔭の1番バッター。厳しいコースに投げ込んでもしっかり食らいついてくる。できれば2巡目までとっておきたかったがフォークを使うしかないな)
鶴田のフォークのサインに白田もうなずき、真ん中低めのストライクゾーンからボールに外れるフォークボールを投じた。しかし、三浦はその球を冷静に見極めるとフォアボールで出塁した。
2番バッターの田所は、初球の内角へのシュートをいきなり打ちにいった。その時すでに1塁ランナーはスタートを切っていた。
(ヒットエンドランか!)
田所は内角への球をうまく逆方向に運ぶ技ありのライト前ヒットを放つと、1塁ランナーの三浦はいっきに3塁まで到達した。ノーアウト1、3塁。初回からいきなりの大ピンチが訪れた。
キャッチャーの鶴田はタイムをとると白田の元に向かった。
「コースも悪くないし、球のキレもまずまず。これは相手を褒めるしかないな」
「いや、俺が悪い」
「えっ?」
「コースは悪くない? 球のキレもまずまず? それじゃあダメなんだよ! 強豪校の強力な打線を完璧に押さえようと思ったら、完璧なコースに投げるか、多少コースが甘くても打たれないような精度の高い球でも投げられない限り通用しないんだよ!」
「まあ確かにそうだけど」
「最初のフォークを見送られたのは、俺のフォークの精度の問題だ。あのフォークじゃ選球眼の良い相手には簡単に見極められてしまう。だからもっと落ち始めが遅くてバッターに見極められにくい球に改善していかないと。そしてさっき打たれたシュートはコースが微妙に甘かった。これも俺のミスだ。鶴田、相手を褒めてないでもっと俺にダメ出ししろよ! 俺はもっと成長して黒山からエースの座を奪えるくらいの実力を身につけたいんだ!」
「わかったよ。なら遠慮なく厳しい注文を付けさせてもらいますか。次のバッターからはデッドボールになってもいいくらいギリギリの内角ばかり攻めてくぞ。中途半端な球だけは投げるなよ」
「おう!」
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