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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第9章 練習試合1試合目 船町北VS大阪西蔭 
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第57話 奥村三郎

 大阪西陰2軍のシートバッティングが終わると、それと入れ替えで船町北ナインが練習をするためグランドの中に入っていく。


「あのピッチャー気になるな。よし、ちょっと聞いてくるわ!」


 黒山はそう言うと、グラウンドの外に出ようとするさっきシートバッティングで投げていた投手に話しかけた。


「あのーすみません、名前なんて言うんですか?」


「奥村です」


「下の名前は? あと学年も」


「奥村三郎、1年です」


「へーまだ1年生なんだ。いやね、さっき投げてるとこ見たんだけど奥村君のコントロールエグイね。その内絶対1軍に上がれるよ。頑張ってね」


「ありがとうございます。ただ、この体格なんで監督からは全然期待されてなくて……」


「何弱気になってんだよ! これから伸びるかもしれねえだろ。それに小さくても活躍してる選手なんてプロでもいるじゃんか。ヤルグドの磯野とかさ。だから腐らず頑張れよ!」


「おーい黒山! 早く練習準備しろよ!」


「ああわかってるよ! じゃあな奥村。勝手に期待してるぜ!」


「黒山さん、ありがとうございました!」


 

 午前10時。戸次監督が選手達を引き連れて船町北がいるグラウンドにやってきた。


(うわーみんなデケー! テレビでは見たことあったけど、生でみると凄いな。180近くある俺でもあの中だったら小さい方だな。奥村が弱気になるのもちょっとわかる気がする)


「鈴井監督、それじゃあ早速始めましょうか。先攻後攻は1試合目も2試合目もそちらが先攻でよろしいですか?」


「ええそれで大丈夫です。あのーちょっと気になってたんですけど、千石君て今日試合出ないんですか?」


「あー心配しないでください。2試合目の先発でちゃんと出しますから。今は別のグラウンドで練習中です」


「良かったー。高校ナンバー1投手との呼び声も高い千石君との対戦を選手達も心待ちにしてたんで安心しました」


 千石聖人。大阪西蔭高校エースの3年生投手。2年生の頃からエースとして活躍し、去年の夏の甲子園準々決勝ではあの龍谷千葉高校相手に先頭打者ホームランを打たれるも、その後はランナーを1人も許さないパーフェクトピッチングで5回まで1失点に抑える。しかし、6回途中から肩を痛めて緊急降板。その後は肩を守るため1試合100球以内、連投禁止という制限で投げているため、メディアからはガラスのエースという愛称で親しまれている。


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