第49話 船町北VS龍谷千葉㉑
5番バッターの黒山が打席に上がるところで、清村弟はタイムをかけるとマウンドに向かった。
「おい村沢!」
「すまん!」
「えっ? なんで謝るんだ?」
「いや、だって打球から逃げて2点も取られちゃたからさ」
「逆だよ逆。俺は褒めようと思ってたんだぞ」
「どこに褒める要素があるんだ?」
「まずは安達からのホームランを阻止したこと。落ちる癖球のおかげでバットに当たる位置がずれたんだ。それでもヒットにされたのは、まあ安達を褒めるべきだな。そして2つ目はあの打球を避けれたこと。もし当たってたら怪我してたかもしれねえからな」
「総次郎……お前って意外と優しいんだな」
「別にそんなんじゃねえよ。お前に怪我されると目標の甲子園優勝が遠のくからな。それだけだ」
「全く、素直じゃねえな」
「そんなことより、次のバッターの黒山、まあまあいいスイングしてるからな。油断せずにしっかり投げろよ」
「了解了解」
黒山に対する初球は、外角低めにストレート。少し外に外れてボール。
(130くらいの平凡なストレートだな。しかも右投げ。左バッターの安達と俺が続く場面でなんでわざわざこいつを出してきたんだ?)
2球目、内角高めにストレート。これも少し高めに外れてボール。
(まっ、よくわかんねえけど超攻撃型のチームだけあって逆にピッチャーの方は人材不足なんだろうな)
そして3球目、内角低めのストライクゾーンに入る球を、黒山は打ちにいった。
(よし、これで同点だ)
「カーン!」
明らかな打ち損じとなったその打球はキャッチャーゴロとなり、2アウトから始まった船町北打線怒涛の追い上げは、あと1点取れれば追いつけるという惜しいところで終わってしまった。
(くそ―打ち損じた。ていうかなんか曲がったか? まっ、過ぎたことはしょうがない。これからの俺は味方の逆転を信じてピッチングに集中だ)
123456789
船町北 01020002
龍谷千葉 1021020
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