第452話 カット隊の功罪
野口の放った打球はキレイなセンター前ヒットとなり、船町北はさらに1点を追加した。
123456789
大阪西蔭 000123123
船町北 000200007
9回裏が始まった時点で10点差あった点差がとうとう3点差にまで縮まり、ホームランが出れば同点という状況まで追い込まれてしまった大阪西蔭。しかもここで迎えるは、この日2本のホームランを放っている絶好調の安達弾というおまけ付きだった。この状況には、さすがの戸次監督も焦りまくっていた。
(佐藤を投入しても船町北打線を止められんとは完全に想定外や。本来ならまたピッチャーを交代したいとこやけど、もうベンチには控えキャチャーが1人しか残っとらん。去年まではピッチャー枠を4人確保していたが、今年はカット隊を6人入れたせいで枠が3人になったことがここにきて裏目に出てもうたか)
キャッチャーの早乙女は、たまらずタイムを取るとマウンドに向かった。
「おい佐藤、なんやねん今の球は」
「ちゃんと構えたとこにいってなかったか?」
「そうやなくて、あの置きにいった球はなんやと言ってんねん」
「置きにいく? 別にそんなつもりは……ただ最初に打たれたヒットの時みたいに高めに浮かないように気を付けてただけで」
「それがあかんねん! あの対戦は実質お前が勝っとった。ちゃんと腕を振り切って投げた力のあるストレートやったおかげで、完全に詰まらせてた。でも今打たれたあの球はあかんわ。あんな中途半端な投球で打たれたら、後悔しか残らへんで!」
「後悔しか残らない……」
「次の対戦はホームランをすでに2本も打ってる絶好調の安達や。そんな安達に対してまたあんな置きにいったストレート投げたら100パー打たれるで」
「わかった。後悔が残らないように全力で投げ切るよ」
「そうや、その意気や!」
早乙女の言葉で、なんとかモチベーションを取り戻した佐藤。しかし、安達との対戦に限って言えば、この早乙女のアドバイスは間違いだったのかもしれない。なぜなら、安達は例えどんなに置きにいったストレートだろうが、低めのコースに決まってさえしまえば絶対に打てないのだから。
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