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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第34章 夏の甲子園3回戦 船町北VS大阪西蔭
460/479

第451話 安達まで回せば

(やっぱりストレート! しかも高めに浮いてる!)


 星は迷わずバットを振り抜いた。


「カーン!!」


 星のバットからは、明らかに詰まらされたことがわかる打球音が鳴り響いた。


(しまった!)


 そうアウトを覚悟しながら力なく1塁へと走り始める星。


(よしっ!)


 そう心の中でガッツポーズをしながら打球の行方を見守っていたキャッチャーの早乙女だったが、次第に雲行きが怪しくなっていく。


(あれ? この打球方向、センターとレフトとショートの間くらいだな。下手したら落ちるかも……)


 そんな早乙女の感じた一抹の不安が、現実のものとなってしまう。


「ポトン」


 全力で打球を追いかけていたセンター、レフト、ショートの丁度中間地点に球が落ちる。2アウトながらランナー1、3塁となり、船町北のチャンスが広がる。


(あっぶねー絶対アウトになると思った。狙っていたストレートがきたってのに、それでも詰まらされた。やっぱりあのピッチャー、只者じゃなかったな)


(力のこもった良いストレートやった。完全に詰まらせてた。内容では完全に勝ってた。それやのに……)


 ほっと胸を撫で下ろす星と、悔しがる早乙女。そして……。


(俺の渾身のストレートが……)


 渾身のストレートを打たれたことに大きなショックを受け、自信を失った佐藤。そして打席は2番バッターの野口に回る。


(12対8の4点差でランナー1、3塁。つまり、俺が塁に出て安達まで回せば……ホームランで同点に追いつける! この回の攻撃が始まるまでは10点差もあったってのに、ついにここまできた。絶対に安達まで回すぞ!)


 そんなやる気に満ち溢れた野口に対する初球、早乙女は外角低めへのストレートを要求した。


(また高めに浮くかもしれないがそれでも構わへん。お前のストレートには力がある。自信持って投げ込んでこい!)


 しかし、星にヒットを打たれすっかり意気消沈していた佐藤は、自信を持って投げ込むどころかこんなことを考えていた。


(俺のストレートなんて所詮大したことなかったんだ。ならせめて、コントロールだけでも間違えないようにしないと……)


 こうして佐藤が投げたストレートは、早乙女の要求通り外角低めへと向かっていた。しかし……。


(おいおい、何だよこの置きにいったストレートは。こんなんじゃ打た……)


「カキーン!!」


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