第451話 安達まで回せば
(やっぱりストレート! しかも高めに浮いてる!)
星は迷わずバットを振り抜いた。
「カーン!!」
星のバットからは、明らかに詰まらされたことがわかる打球音が鳴り響いた。
(しまった!)
そうアウトを覚悟しながら力なく1塁へと走り始める星。
(よしっ!)
そう心の中でガッツポーズをしながら打球の行方を見守っていたキャッチャーの早乙女だったが、次第に雲行きが怪しくなっていく。
(あれ? この打球方向、センターとレフトとショートの間くらいだな。下手したら落ちるかも……)
そんな早乙女の感じた一抹の不安が、現実のものとなってしまう。
「ポトン」
全力で打球を追いかけていたセンター、レフト、ショートの丁度中間地点に球が落ちる。2アウトながらランナー1、3塁となり、船町北のチャンスが広がる。
(あっぶねー絶対アウトになると思った。狙っていたストレートがきたってのに、それでも詰まらされた。やっぱりあのピッチャー、只者じゃなかったな)
(力のこもった良いストレートやった。完全に詰まらせてた。内容では完全に勝ってた。それやのに……)
ほっと胸を撫で下ろす星と、悔しがる早乙女。そして……。
(俺の渾身のストレートが……)
渾身のストレートを打たれたことに大きなショックを受け、自信を失った佐藤。そして打席は2番バッターの野口に回る。
(12対8の4点差でランナー1、3塁。つまり、俺が塁に出て安達まで回せば……ホームランで同点に追いつける! この回の攻撃が始まるまでは10点差もあったってのに、ついにここまできた。絶対に安達まで回すぞ!)
そんなやる気に満ち溢れた野口に対する初球、早乙女は外角低めへのストレートを要求した。
(また高めに浮くかもしれないがそれでも構わへん。お前のストレートには力がある。自信持って投げ込んでこい!)
しかし、星にヒットを打たれすっかり意気消沈していた佐藤は、自信を持って投げ込むどころかこんなことを考えていた。
(俺のストレートなんて所詮大したことなかったんだ。ならせめて、コントロールだけでも間違えないようにしないと……)
こうして佐藤が投げたストレートは、早乙女の要求通り外角低めへと向かっていた。しかし……。
(おいおい、何だよこの置きにいったストレートは。こんなんじゃ打た……)
「カキーン!!」
---------------------------------------------------------------
小説の続きが気になるという方は、ブックマークや
下にある☆☆☆☆☆から作品への応援をいただけたら嬉しいです。




