第443話 あの時がピークやったなあ
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大阪西蔭 000123123
船町北 00020000
9回表を終えた時点で、大阪西蔭は船町北とのリードを10点差に広げていた。この試合を見ていた客の1人が、ポツリとつぶやいた。
「4回裏に船町北が逆転したあの時がピークやったなあ。まさかあそこから、ここまで一方的な展開になってまうとは思わんかったわ」
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4回裏。2アウトランナーなしから山田が打った打球は安達に続く2者連続のホームランとなり、球場はこの試合1番の大盛り上がりを見せた。しかしこの後、後続のバッターを打ち取りベンチに戻った選手達にかけた戸次監督の言葉が、王者大阪西蔭の尻に火をつけた。
「本当は内緒にしておくつもりだったのですが、この際今言っておきましょう。現時点でスカウトの方からドラフト指名確実だと言われているのは、高見沢君1人だけです。それ以外のレギュラーメンバーは全員、甲子園での活躍を見てから検討すると言われていました。なので恐らくですが、このまま試合に負けるような事態になれば、プロへ進めるのは高見沢君だけという結果になりそうですね」
このままではプロになれない。そんな危機感を覚えた大阪西蔭ナイン達は、死に物狂いで試合に臨んだ。
5回以降、川合がどれだけ内角の厳しいコースを攻めようが、大阪西蔭ナイン達は怯むことなく積極的にバットを振っていった。その思い切りのいいスイングは、鉄壁を誇る船町北の内野守備の頭上を越えていくヒットを積み重ねていき、5回は2点、6回は3点を奪われたところで川合は降板を余儀なくされた。
川合の後を継いだ吉田だったが大阪西蔭打線の勢いを止めることはできず、7回は1失点、8回は2失点、9回は3失点と回を追うごとに多くの点数を奪われていった。
一方船町北打線はというと、相変わらず万場兄弟を攻略できないまま三振の山を築いていき、唯一期待できる安達に回った打席では、あっさりと敬遠されてしまった。
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こうして迎えた9回裏。常識的に考えて逆転などまず不可能なこの絶望的な状況の中、この回の先頭バッター星の目はまだ勝負を諦めてはいなかった。
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