第437話 3つの弱点
(くっくっく。序盤こそ船町北はんはうちと互角に戦ってきたように見えたかもしれへんけど、こっからは一方的な展開でボコボコにしてやるで)
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それは、船町北との対戦が決まった後の大阪西蔭のミーティングでのことだった。
「……という訳で、船町北との試合では比嘉君をマウンドから一刻も早く引きずり下ろすため、1番から6番までをカット隊で固めます。そして比嘉君が降板したあとは、恐らく川合君が投げてくるはずです。ここでみなさんに、簡単な川合君対策を説明したいと思います」
ノートとシャーペンを取り出して、戸次監督の話を真剣に聞き入る選手達。
「川合君の持ち味と言えば、何といってもそのストレートの速さです。150キロオーバーの速球をバンバン投げ込んでくるピッチャーなんて、プロでもそうそういませんからね。ですが安心してください。彼には致命的な弱点が3つもあります。まず1番分かりやすい1つ目の弱点は、ストレートしか持ち球がないということですが、これはわざわざ言うまでもありませんね。大事なのは残り2つの弱点です。みなさん、しっかりメモを取ってくださいね」
シャーペンを握る手に力が入る選手達。
「2つ目の弱点、それはストレートにキレがないということです。これは映像を見る限り、そして川合君が高校から野球を始めた初心者だという点から推察してもかなり有力な情報だと思います。ただし、この弱点は長所にもなりえます。極端にキレの悪いストレートというのは、お辞儀して落ちてくるように見えるので打ちづらいものです。さらに厄介なことに、川合君はキレの良いストレートを投げる比嘉君の後に登板することが多いので、余計そのキレの差が顕著に出て打ちづらくなると推察されます。ですが、さっき話したように比嘉君にはカット隊を当てるので、レギュラーメンバーの6人は比嘉君の球を見ることがないまま川合君と対戦できますので、その分有利に対戦できるはずです。君達6人には期待してますよ」
「はい!」
「そして3つ目の弱点ですが、川合君のコントロールが甲子園にきてから格段に良くなったということです。地方予選の段階では四死球を連発していたみたいですが、甲子園にきてからはまだ1度も四死球を出していません」
戸次監督の言葉に、こいつ何言ってんだという感じの表情を浮かべる選手達。
「普通、コントロールが改善されたというのは弱点ではなくむしろ長所なのですが、こと川合君に関してはそうとも言い切れません。なぜなら、彼のコントロールが改善されたことでデッドボールを食らう心配がなくなり、バッターは恐怖を感じなくなるからです」
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