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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第34章 夏の甲子園3回戦 船町北VS大阪西蔭
442/479

第433話 ライトフライの衝撃

      123456789 

 大阪西蔭 0

 船町北  0


 1回の攻防を終えてスコアこそ0対0のままだったが、最後に安達が放ったライトフライは大阪西蔭の選手達に大きな衝撃を与えていた。


(万場が投げた内角への厳しい球を初球からいきなり捉えるやなんて、そんな奴初めて見たで)


(運良くアウトにはなったが、当たりはツーベース、いや、足の速さを考えたらスリーベースになっていたかもしれへん)


(あとちょっとでも打球が上がっていたら、確実にホームランにされてたで)


 そしてもちろん、打たれた万場弟本人にも安達のライトフライの衝撃は深く刻まれていた。


(安達か……昔練習試合で対戦したことがあったみたいやけど、正直よく覚えてへん。せやけど、もう二度と忘れることができへん名前になりそうやわ)


 そして選手達と同様に、戸次監督も安達のバッティングには度肝を抜かれていた。


(おいおいおいおい、ありえへんやろ。ど真ん中の甘いコースの球とかならまだしも、浩二の球は確かに内角高めの厳しいコースにいっていた。しかも、何球か見た後の球ならまだしも、初球の球を捉えよった。安達弾……ひょっとしたら俺の想定していた以上のバケモンなのかもしえへん)


 さらに、この安達のライトフライは船町北の選手達のモチベーションをも上げていた。


「惜しかったぞ安達!」


「次はホームラン絶対いけるぞ!」


「さあさあ、俺達も安達に続いて万場兄弟を打ち崩してくぜ!」


 さらにさらに、この安達のライトフライと、2回に入っても相変わらずヒットを打つ気のない明らかに球数を投げさせるだけが目的のカット打法を続ける大阪西蔭の姿勢を見て、観客達の大多数は完全に船町北の応援をするようになっていた。


「大阪西蔭卑怯やぞ!」


「ちゃんとまともに勝負せい!」


「頑張れ船町北!」


「負けるな比嘉!」


 スコア上はただのライトフライ。されど、安達の放ったライトフライは普通のヒット以上にこの試合に影響を与えていたのだった。


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