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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第34章 夏の甲子園3回戦 船町北VS大阪西蔭
441/479

第432話 安達弾VS万場弟②

 安達の放った打球は猛烈な勢いの低い弾道で飛んでいったものの、運悪く打球方向はライトを守る野宮の真正面だった。


「パン!!」


「アウト! スリーアウトチェンジ!」


 ちょっとでも打球方向がズレていれば確実に長打コースとなっていた強い当たりだったものの、結果はライトフライとなった。


「クソっ! 正夢にはできなかったか」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 今から約1年前。大阪西蔭との練習試合で万場弟から三振を奪われて以来、安達は度々万場弟との対戦を夢の中で見るようになっていた。


「ストライク! バッターアウト!」


 最初のうちは、実際に対戦した時と同じように三振を奪われて終わっていたものの、同じ夢を何度も見るうちに、安達は少しずつ万場弟の投球を学習していった。そして、それは10回目に万場弟と対戦する夢を見た時だった。


「カーン!!」


「アウト!」


 安達は初めて万場弟の投げた球にバットを当てることに成功した。それ以来、安達は万場弟と対戦する夢を見ても三振を奪われることは少なくなっていき、代わりにフライやゴロの当たりが増えていった。そして、それは20回目に万場弟と対戦する夢を見た時だった。


「カキーン!!」


 安達は20回目にして初めてヒットを打つことに成功した。その後も安達は、月に2、3回ほどのペースで万場弟と対戦する夢を見続けてきたが、ヒットこそたまに出るようになったものの、ホームランはまだ1度も打てずにいた。しかし、それは大阪西蔭と対戦する前夜のことだった。


「カキーン!!!!」


 久しぶりに見た万場弟と対戦する夢の中で、安達はついに特大のホームランを放ったのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 夢の中で見たようなホームランを打てず悔しがる安達だったが、すぐに気持ちを切り替えた。


(でも、尻餅を2度もついて三振した1年前に比べたら確実に進歩している。次の打席で、今度こそリベンジしてやるぞ!)


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