表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第33章 夏の甲子園2回戦 船町北VS山形大星
429/479

第420話 吉と出るか凶と出るか

 2回表。吉田は何とか2アウトまでこぎ着けたものの、ランナー満塁という大ピンチを迎えていた。これには鈴井監督も、今ここで交代させるべきか悩んでいた。


(さすがにこれ以上は引っ張れないか)


 タイムという言葉が喉元まで出かかるも、鈴井監督はその一言を飲み込んだ。


(いやまだ我慢だ。確かにピンチを迎えてはいるが、初回に比べると球速も出てきてるし、球のキレも戻りつつある。この回を無失点で切り抜けさえすれば、まだまだ十分立ち直れるはずだ。点を入れられるまでは吉田を信じよう)


 果たしてこの決断が、吉と出るか凶と出るか。山形大星の6番バッター阿部が打席に立つと、鈴井監督は祈るようにしてこの対決を見守った。


 初球。


「ボール!」


 ストレートが、外角の高めに外れて1ボール。


 2球目。


「ストライク!」


 内角低めに投げたカーブを、阿部が空振りして1ストライク1ボール。


 3球目。


「カーン!」


「ファール!」


 内角高めへのストレートに当てた打球は、真後ろに飛ぶファールボールとなった。


(このバッター、ストレートにタイミングが合ってるたい。ならば、残りは全球変化球で攻めるたい)


 4球目。


「ボール!」


 外角の低めに外れたチェンジアップを、阿部が見送り2ストライク2ボール。


 5球目。


「カーン!」


「ファール!」


 内角ギリギリのコースに投げ込んだスライダーを、阿部は何とかカットする。


 6球目。外角低めギリギリに投げ込んだカーブを、阿部は見送った。


(よし、ストライクたい!)


「ボール!」


(今のをとってくれないたいか。今日の審判は判定が厳しいばい。でも、この打席は特にコントロールが安定してるし球のキレもどんどん良くなってきてるたい。このピンチさえ乗り切れれば、吉田先輩はまだまだいけそうたい)


 そして、運命の7球目。吉田が投げたのは、1番自信のあるチェンジアップだった。


「カーン!!」


 内角低めにきたチェンジアップに、阿部は何とかバットを合わせるも完全に芯を外す打ち取った当たりだった。しかし、これが山形大星にとっては幸運にも、逆に船町北にとっては不運にも、ライト前にポツリと落ちる当たりとなってしまいサードランナーがホームを踏んで1点が入った。そして、セカンドランナーもサードベースを踏んでホームへと突っ込んでくる。


(これ以上点を入れさせてたまるか!)


 ライトの山田が渾身の力を込めて投げたバックホームは、ノーバウンドのストライク送球でキャッチャー西郷の元に。


(よし、これでチェンジたい!)


 スライディングで突っ込んでくるランナーに、西郷がタッチしにいったその時だった。


「ドスッ!」


 ランナーのスライディングが西郷の左足を直撃し、鈍い音が響いた。


---------------------------------------------------------------


小説の続きが気になるという方は、ブックマークや

下にある☆☆☆☆☆から作品への応援をいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ