第415話 決着
「ストライク! バッターアウト!」
『こんな遅い球なら何度でもくらいついてやる』
そう意気込んでいた菊池だったが、皮肉にも菊池はその次の1球で空振りの三振に倒れてしまった。それも、遅いストレートよりもさらに遅いただのスローボールによって。
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菊池が3球目のストレートをファールしたのを見て、キャッチャーの西郷は気が付いた。
(このバッター、比嘉の遅いストレートに早くも対応してきたばい。しかも、明らかなホームラン狙いのフルスイングで……このまま真っ向勝負するのは危険たい。かと言って、先頭のバッターを歩かせるのも嫌たい。うーん……ここはあのボールに頼るしかないたい)
4球目。西郷が比嘉に出したサインは、公式戦ではまだたったの1度だけ、甲子園予選の決勝で三街道高校の4番バッター角田相手にしか投げたことのないスローボールだった。遅いストレートか普通のストレートかの2択しか頭になかった菊池が、突然投げられたスローボールに対応できるはずもなく、菊池が慌てて振ったバットは無常にも空を切った。
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『この試合、なんとか同点に追いつくためには俺が打つしかない!』
ついさっきまで自分に言い聞かせていた菊池のその言葉は、無情にも現実となった。
123456789 計
船町北 000001000 1
秋田腕金 000000000 0
古田は9回までを投げ終えこの試合の奪三振数が23個となり、今までの甲子園歴代記録だった22個を更新するなど最後まで球場を沸かせ続けた。
しかし、菊池の分析通り川合の異常にキレが悪い落ちるストレートに目を慣らされた秋田腕金打線にとって、余計キレが増してみる比嘉の2種類のストレートを攻略するのは困難だった。結局最後まで1人も出塁すらできないまま、比嘉と川合の継投による完全試合達成という形でこの試合は幕を閉じた。
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