第408話 安達弾VS古田輝希の左②
古田の投球練習が終わり、安達が打席に入る。
(なぜこんなにも雰囲気が変わって見えるんだ?)
右で投げていた今までの古田とのあまりのギャップに、戸惑いを隠せない安達。
(にしても古田の奴、右で投げてた時と比べて明らかに気合入りまくってんな。まっ、それだけ待ち望んでいた対決ってことか。なら俺も、しっかりリードで応えてやらねえとな。まずは初球だが、投球練習で一通りの変化球を見た感じだと、今日はフォークとスライダーの調子が良さそうだが……)
一瞬フォークのサインを出そうとするも、すぐに思い直す菊池。
(やっぱり古田の左で1番信頼できる球と言えば、これしかないよな)
外角低めにストレートのサインを出す菊池と、静かに頷く古田。
(どちらかと言えばスロースターターの古田が、投球練習もしないまま上がったマウンドでいきなり自己最速の150キロを出した。今日の古田はノリに乗っている。いけ古田。まずは自慢のストレートで、安達をビビらせてやるんだ!)
ゆったりとしたワインドアップから放たれた古田のストレートは、吸い寄せられるように外角低めに構えた菊池のミットに収まった。
「ストライク!」
微動だにしない安達。というよりも、全く反応することができなかった安達と言った方が正しいのかもしれない。
(完全に低めに外れたと思った球が、ぐんぐんと浮き上がって最後には低めのストライクゾーンを通過していった。今のはたまたま俺が打てない低めのコースだったが、仮にもう少し高くきていたとして、果たして反応できていただろうか? ていうか今の球、滅茶苦茶速かったな。何キロ出てたんだ?)
安達が電光掲示板を確認すると、153キロと表示されていた。
(確か事前に調べた情報では、古田の最速は150キロだったはずなのに……全然話が違うじゃねえか)
7回が始まったばかりの初球から、いきなり自己最速記録を3キロも更新するストレートを投げた古田に対して、球場中から観客の歓声とどよめきか入り混じった音が鳴り響いていた。
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