第407話 安達弾VS古田輝希の左①
「あーまた三者凡退か」
「あと3回で最低でも同点に追いつかなきゃいけないとなると、ますます追加点はやれないな」
「わかってるよ。もう1点もやらねえ。そのためにも、まずは安達、お前を俺の左でも完璧に打ち取ってやる!」
6回裏の攻撃が始まってから終わるまでの間、ギリギリまでブルペンで投球練習をしていた古田と菊池のバッテリーは、そう意気込んで7回表のグラウンドへと向かった。
7回表が始まる直前、船町北ベンチでは鈴井監督が選手達に古田の左対策について話していた。
「古田が左にスイッチしてくれたのは、こちらとしては願ったり叶ったりだ。古田の左の配球のうち、半分は計5種ある変化球、そして残りの半分はストレートだ。単純計算になるが、古田の変化球に山を張っても狙い通りの変化球がくる確率は約10%。そんなギャンブをするよりも、残り半分のストレートを積極的に狙っていこう。古田のストレートはキレがいいとは言うが、比嘉のストレートを見慣れているお前らならきっと打てるはずだ。残り3回、追加点を狙ってガンガン攻めていくぞ!」
「はい!」
「あの、監督……」
ここで突然話を切り出したのは、前の回で古田の左に空振り三振を奪われた野口だった。
「どうした?」
「さっき古田のストレートを見た感想ですけど、思っていた以上にヤバいです。正直、安達でも打てるかどうか……」
「何だと? 安達、野口がこんなことを言っているがどう思う?」
「あのナックル以上にヤバい球なんてありえないです。2打席連続で三振を奪われた借りを、ホームランにして返してやりますよ」
安達はそう大見えを切って、7回表の打席へと向かった。
(あれ? 今マウンドに立っているあいつ、本当にさっきまで投げていた古田と同じピッチャーなのか?)
ネクストバッターズサークルから古田の投球練習の様子を見ていた安達がそんな風に感じてしまうほど、左で投げる古田は右で投げていた時とは明らかに違う、ピリピリとした緊張感の漂うオーラ―を放っていた。
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