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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第32章 夏の甲子園1回戦 船町北VS秋田腕金
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第398話 川合のスイング

 6回表。守備位置に着いたキャッチャーの菊池は、2巡目からバッティングの様子が明らかに変化した船町北打線に対してこんな感想を抱いていた。


(2巡目に入ってからというものの、やたらバットを短く持って打席の後ろギリギリまで下がって内角寄りの打席に立つバッターばかりだな。まっ、こういう小細工をしてくるチームは今までにもたくさんいた。しかし、結局そういうチームほど自分本来のバッティングを見失って結局古田を攻略することはできなかった。事実、前の回だって4番5番と連続三振に打ち取ったし、6番も内野フライを打ち上げるのがやっとだったからな。ただし、4回の安達の打席だけはマジで焦ったな。次の打席からは走られるの覚悟で敬遠した方がいいかもな)


 古田の投球練習が終わり、この回の先頭バッター川合が打席に入る。


(あれ? こいつは打席の立ち位置が普通だな。バットの持ち方もかなり下の方を持ってるし。あくまでも自分のスタイルは崩さないってタイプのバッターか。下手にナックルに当てようとしてくる奴よりも、むしろこういうタイプの方が怖いんだよな。確か予選で古田のナックルをソロホームランにした奴もこんなタイプのバッターだったな)


 川合への警戒心を強める菊池。そんな川合への古田の初球。


「ブン!」


「ストライク!」


(中々良いスイングしているな。タイミングは全然合っていないが、当たれば1発もありそうだ。古田、油断するなよ)


 川合のスイングを見て、ますます警戒心を強める菊池。


(おっ、ホームラン打つ気満々って気迫がこっちまで伝わってくるぜ。もう諦めかけていたけど、こいつなら俺から点を奪ってくれるかも知れねえな)


 そう期待を膨らます古田。


 川合の豪快なスイングを見て、ベンチで見守る船町北のチームメイトは口々に感想を言い合った。


「ちょっと前までは素人同然のバッティングだった割には」


「中々力強いスイングをするようになったよな」


「長打力だけで言えば、安達まではいかないまでも山田先輩や比嘉にも匹敵するぞ」


「ただし……」


「ブン!」


「ストライク!」


「当たればの話だけどな」


「ブン!」


「ストライク! バッターアウト!」


 豪快なスイングを見せたものの、全くタイミングを合わせることができないままあっさりと空振りの三振に倒れた川合であった。


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