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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第32章 夏の甲子園1回戦 船町北VS秋田腕金
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第392話 方針転換

 安達が3球連続でファールを打ち、しかも徐々に強い当たりになっていくのを見て、ピッチャーの古田は興奮していた。


(俺のナックルにここまで食らいついてきたバッターは、安達、お前が初めてだ。しかも、あれだけ短くバットを持っていながら、あれだけ強い当たりが打てるなんて。うまくいけばこの打席、ホームラン打ってくれるかもな。そうなれば、晴れて残りのイニングを左で投げられるぜ)


 そんな古田の5球目は、外に外れてボール。


 そして6球目。古田が放ったナックルは、高い位置から真下へと落ちるフォークボールのような変化でストライクゾーンの真ん中低めに向かっていた。


(頼む安達、ホームラン打ってくれ!)


(今度こそ空振りしてくれ!)


 古田菊池バッテリーが、それぞれ真逆なことを祈っていたこの6球目。しかしその結果は、ホームランでも空振りでもなく……。


「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」


 安達は見逃しの三振に終わった。


      123456789 

 船町北  0000

 秋田腕金 000


(くそっ! 低めに球がくる前に決めきれなかった俺の負けだ。でも、ナックル攻略の糸口は見えてきた。次の打席こそ打ってやる)


 安達が見逃しの三振に倒れたのを見て、古田はまたがっかりしていた。


(ちぇっ、結局打てねえのかよ。しかも見逃しってありえねえだろ。せめて最後まで食らいついてこいよ)


 そして古田は、方針転換を決意する。


(はぁ~。もういい諦めた。この試合、俺が点を入れられることはなさそうだし、念願だった左での安達との対戦も叶わなそうだ。それならいっそのこと、このまま最後まで右で投げ切って完全試合を達成してやるぜ)


 一方菊池は、最後の安達の見逃し方にどこか違和感を感じていた。


(今まであれだけファールで食らいついていたのに、最後はあっさり見逃した。この光景、なんかデジャヴなんだよな。えーと……ダメだ。思い出せない)


 安達は低めの球を打てない。その弱点に気付きかけた菊池だったが、残念ながら菊池がその弱点に気付くのは、もう少し先のことだった。


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