第392話 方針転換
安達が3球連続でファールを打ち、しかも徐々に強い当たりになっていくのを見て、ピッチャーの古田は興奮していた。
(俺のナックルにここまで食らいついてきたバッターは、安達、お前が初めてだ。しかも、あれだけ短くバットを持っていながら、あれだけ強い当たりが打てるなんて。うまくいけばこの打席、ホームラン打ってくれるかもな。そうなれば、晴れて残りのイニングを左で投げられるぜ)
そんな古田の5球目は、外に外れてボール。
そして6球目。古田が放ったナックルは、高い位置から真下へと落ちるフォークボールのような変化でストライクゾーンの真ん中低めに向かっていた。
(頼む安達、ホームラン打ってくれ!)
(今度こそ空振りしてくれ!)
古田菊池バッテリーが、それぞれ真逆なことを祈っていたこの6球目。しかしその結果は、ホームランでも空振りでもなく……。
「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」
安達は見逃しの三振に終わった。
123456789
船町北 0000
秋田腕金 000
(くそっ! 低めに球がくる前に決めきれなかった俺の負けだ。でも、ナックル攻略の糸口は見えてきた。次の打席こそ打ってやる)
安達が見逃しの三振に倒れたのを見て、古田はまたがっかりしていた。
(ちぇっ、結局打てねえのかよ。しかも見逃しってありえねえだろ。せめて最後まで食らいついてこいよ)
そして古田は、方針転換を決意する。
(はぁ~。もういい諦めた。この試合、俺が点を入れられることはなさそうだし、念願だった左での安達との対戦も叶わなそうだ。それならいっそのこと、このまま最後まで右で投げ切って完全試合を達成してやるぜ)
一方菊池は、最後の安達の見逃し方にどこか違和感を感じていた。
(今まであれだけファールで食らいついていたのに、最後はあっさり見逃した。この光景、なんかデジャヴなんだよな。えーと……ダメだ。思い出せない)
安達は低めの球を打てない。その弱点に気付きかけた菊池だったが、残念ながら菊池がその弱点に気付くのは、もう少し先のことだった。
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