第38話 船町北VS龍谷千葉⑩
5番バッターの黒山は、2球目にきた外角高めのストレートを捉えるも、あと一歩伸びが足りずライトフライに終わった。
4回裏。龍谷千葉の攻撃。打席には4番バッターの清村弟が立ち、マウンドにはこの回から白田と交代した水谷が立つ。
(交代していきなり清村弟かよ。まっ、他のバッターでも怖いことには変わりないし、平常心平常心。丁寧に投げていくか)
初球、内角低めのカーブ。見逃しストライク。
2球目、外角低めのスライダー。外にボール1つ分外れてボール。
3球目、内角ギリギリにシュート。どちらの判定でもおかしくないコースだったがボール。
4球目、外角のボールゾーンから外角の低めギリギリに入ってくるシンカー。見逃しストライク。
(よし、追い込んだ。今日の水谷は調子が良さそうだな。最後はオーバースローのストレートで空振りを取りにいくか。でもちょっと待てよ? この打席清村弟はまだ1回もバットを振っていない。厳しいコースばかりで手が出せなかったとも考えられるが、何か狙い球があるのか? もしかしてその狙い球はオーバースローのストレート? いやいやそれはないか。昨日の試合で初披露したばかりだしな)
鶴田は少し迷いながらも水谷にオーバースローからのストレートを外角高めに要求した。
5球目、水谷の投じたストレートは、狙いよりも高めに浮きボール球になりそうだった。しかし、清村弟はすでにスイングを始めている。
(いける! これで空振り三振だ)
キャッチャーの鶴田も、投げた水谷も、同時にそう確信した。だがその確信は、一瞬にして崩れ去った。
『カキーン!!!!!』
オーバースローの直球一本に絞って狙い打つ。森崎監督のこの作戦を忠実に実行すべく、清村弟は外角の高めに外れたボール球を無理矢理打ちにいくと、圧倒的なパワーを誇る豪快なスイングでそのボール球をレフトスタンド中段へと叩き付けた。
(見たか安達弾! これで1本差だ。次の打席でも、そのまた次の打席でもホームランを打って試合にもお前にも勝ってやる!)
清村弟はファーストを守る安達を睨みつけながら一塁ベースを回ったが、当の安達本人は打球が飛んでいったレフトスタンド方向をボーと見つめていたため、そのことには気付いていなかった。
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船町北 0102
龍谷千葉 1021
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