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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第30章 もうすぐ夏の甲子園開幕
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第369話 奇跡の二刀流 秋田腕金高校野球部の軌跡②

『人数の少ない野球チームと言えば、選手層が薄くレギュラー争いも少ないため、一般的にはチームが弱くなりがちです。しかし、このチームは違いました。人数が少ないからこそ可能な少人数での効率的な練習により、9人はみるみるうちに野球の腕を上達させていきます。当時監督を務めていた野原さんに、どんな練習をしていたのかお話を伺いました』


「そうですね。特に変わった練習というのはなくて、基礎練習を徹底的にやり込むといった感じでしょうか。あと1番気を付けたのは怪我の対策です。なんせ1人でも大きな怪我をしてしまうと、試合に出られなくなってしまいますからね。練習の前後に行うストレッチはかなり念入りにやらせましたよ」


『その入念なストレッチを腕金ナイン達は今でも継続しており、御覧の通り全員が体操選手も顔負けなほどの柔軟な体を持っています』


 テレビ画面には、両足を180度に広げながら頭を地面にペタリとつける腕金ナイン達の映像が流れる。


「それに加えてピッチャーの輝希には、中学に上がるまでは変化球を投げるのを禁止させたりとか、あとは利き手と逆の手でのキャッチ―ボールも必ずやらせました。同じ利き手でばかり投げさせると、片方の筋肉ばかりに負荷がかかって故障の原因になりますからね」


『このような野原監督の指導の成果もあって、大きな怪我を経験することもなく順調に成長していった選手達。やがて選手達が中学生になると、メンバーはそのままリトルシニアのチームとして引き続き野原監督の元野球を続けました。中学生になり、小学生時代には禁止されていた変化球をやっと投げられると大喜びの古田君は、夢中になって変化球の練習するようになりました』


「カーブにスライダーにカットボールにフォークもある程度投げられるようになってきたぞ。次はもっと変わった変化球に挑戦したいな。そうだ、ナックルを投げてみよう」


『ナックルとは、ボールの回転を極力抑えながら無回転で投げることで、縫い目に空気抵抗を受けて不規則な変化をしながら落ちていくという非常に珍しい変化球で、現代の魔球とも呼ばれています。投げられる選手はプロでもほとんどいないというこのナックルボールに、古田君は本やネットの情報などを頼りに試行錯誤しながら果敢に挑戦しました。しかし、これまで覚えてきた変化球とは違って、一向に投げられる気配すらありませんでした』


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