第36話 船町北VS龍谷千葉⑧
去年の夏の大会。龍谷千葉打線相手に2回を投げて3本のソロホームランを浴びてボコボコにされた白田。
(来年こそリベンジしてやる)
静かな闘志を燃やしながら、来年の夏、同じ舞台でのリベンジを目標に必死に練習を積んできた白田。
もともと良かったコントロールをさらに磨き上げ、変化球のキレも増し、新たな持ち球としてフォークも覚えた白田。
そんな中、監督から突然告げられたエースを黒山にする発言。強豪校相手の試合は今後エースの黒山1人に投げさせると言う。つまり、最後の夏の大会で龍谷千葉と当たることになれば、白田にはリベンジの機会が回ってこなくなるということだ。
(ふざけるな!)
そう声が出かかったその時、監督からあるノルマをクリアすればエース黒山の話は白紙に戻すと言われる。
1つ目のノルマ。3回戦に当たる千葉修道打線を4回1失点以内に抑えること。
そして2つ目のノルマ。4回戦に当たるあの因縁の相手、龍谷千葉打線を3回2失点以内に抑えること。
1つ目の条件は、新たな持ち球フォークを解禁することでなんとか達成することができた。
そして2つ目の条件も、キャッチャー鶴田と協力しながら相手の裏をかく配球でなんとか1失点に抑え、あとアウト1つというところまでやってきた。それなのに、最後の最後、たった1球の失投により逆転ツーランホームランを許してしまう。
(もう終わった……)
白田は心の中で思わずそう呟いた。
「まだ終わってないぞ!」
白田の心の声をまるで聞いていたかのような言葉を投げかけたのは、タイムをかけてマウンドまでやってきた鶴田だった。
「3回2失点のノルマを達成できなくて、もう終わったとかどうせ思ってたんだろ? でもよく考えてみろよ。相手はあの龍谷千葉だぞ。二桁得点が当たり前の超強力打線。水谷はもちろん、暫定エース様の黒山だって3回2失点のノルマを達成できないかもしれない。3失点や4失点、もしかしたらそれ以上の大量失点を食らうかもしれない。そうなればまだまだお前が夏の大会で龍谷千葉にまたリベンジできる可能性だって十分にあるんだよ! だから白田、最後までしっかり投げ切れよ!」
まるで味方の投手陣が撃ち込まれることを期待するかのような鶴田の物言いに、思わず白田は笑ってしまった。
「ぷぷっ、お前ひどいな。あとで2人に言いつけるぞ」
「おいおい、今のはお前のやる気を出させるための冗談で……」
「わかってるよ。助かった。ありがとう」
ツーランホームランを打たれたことで、一度は崩壊しかかった白田のメンタル。
しかし、鶴田の機転の利いた声掛けもあって何とか心を持ち直すことに成功した白田は、龍谷千葉の3番バッター鈴木相手に、スライダーとシュートを内角と外角、ギリギリのコースをつく投球で2ストライクまで追い込むと、最後は内角高めの釣り球を打たせて外野フライに打ち取った。
白田佑介。龍谷千葉打線相手に3回を投げて3失点。ノルマこそ達成できなかったものの、2桁得点が当たり前の龍谷千葉にとっては十分なインパクトを与える結果となった。
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船町北 010
龍谷千葉 102
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