表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第28章 夏の甲子園千葉大会決勝 船町北VS三街道
360/479

第352話 ベストピッチ

「カーン!!!」


 逆転のソロホームランを放った安達の次に打席に上がった4番山田の打球は、またまたレフト方向へと大きく打ち上がるフライだった。


「いけー!」


「伸びろ伸びろ!」


「またGuM風でホームランだ!」


 船町北のベンチではそんな声援が飛び交ったが、そう都合よく風が吹くはずもなく山田はレフトフライに倒れた。


     123456789

 船町北 000100001

 三街道 01000000 


「くそっ! また安達にやられた!」


 グラブをベンチに叩き付けながら、あまりの悔しさに怒りを露わにする細田兄。そんな細田兄に向かって、大泉監督が注意する。


「コラコラやめなさい。試合はまだ終わっていませんよ」


 大泉監督の言葉に冷静さを取り戻した細田兄は、今度は泣きそうな顔になりながら、監督とチームメイトに向かって謝罪した。


「さっきはすまなかった。ちゃんと低めギリギリのコースを最後まで狙って投げていれば、ホームランなんか打たれることはなかったんだ。それなのに……俺は自分勝手に安達との真っ向勝負にこだわってしまった」


 そんな細田兄の肩を、ポンと叩く大泉監督。


「別にそこを反省する必要はありませんよ。1ストライク3ボールのあの状況から無理に低めギリギリを狙っていたら、フォアボールで安達君に出塁されてしまうリスクが高かった。そうなると、3塁まで走られて実質スリーベースです。それならば、例え打たれるリスクがあったとしても、真っ向勝負を選んだあなたの選択は間違ってはいません。それに、あの勝負は実質雄一君が勝っていましたよ。ただ不運にも、風が安達君の味方をしてしまった。それだけのことです」


「監督……」


「安達君に打たれたあのストレート、球速は確認しましたか?」


「いや、見ていませんでした」


「161キロです」


「えっ! そんなに出てたんですか」


「あの1球は、今まで私が見てきた中でも1番に入ると言っていいベストピッチングでした。あれを打たれたんじゃ、誰も文句は言えませんよ」


「監督……」


 涙を拭う細田兄と、思わずもらい泣きしそうになるチームメイト達。


「何だかみなさん、逆転されて湿っぽい雰囲気になっているようですが、少なくとも私はまだまだうちが有利だと踏んでいます。だってほら、まだたったの1点差ですよ」


 そう言いながらスコアボードを指さす大泉監督。


「君達の実力を持ってすれば、簡単にひっくり返せる点差です。どうやら9回も、船町北は川合君を投げさせるようですね。彼はずっと制球に難がありましたが、8回からはかなり安定していました。そこで、ここからは積極的にヒットを狙いにいきましょう。球速が速いといっても、所詮はストレートしか投げられないピッチャーです。君達ならきっと、打ち崩せると信じていますよ」


「はい!」


---------------------------------------------------------------


小説の続きが気になるという方は、ブックマークや

下にある☆☆☆☆☆から作品への応援をいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ