第34話 船町北VS龍谷千葉⑥
3回裏。船町北の守備が始まる少し前、キャッチャー鶴田は白田に作戦の変更を伝えた。
「そろそろ配球パターンを変えていこう。2回裏の最後のバッター、わざわざ厳しい内角のストレートを躊躇なく打ってきた。もしかしたらストレートを狙われてるかもしれない。これからはストレートは見せ球に、スライダーとシュート中心にカウントを取りにいこう」
「わかった」
「この回を1失点以内に抑えればノルマ達成だな。最後まで気を抜くなよ」
「あの打線相手に気なんか抜ける訳ないだろ。よし、あと3人頑張るか」
この後白田は、8番西村、9番山田を連続三振に抑えた。これで2アウト。
この日の鶴田、白田バッテリーの配球はことごとく森崎監督が立てた作戦の裏をかくことに成功してきた。だが次のバッターは清村兄。森崎監督の作戦を平気で無視する天才自由人のこの男の活躍により、初回は失点を許してしまった。
(さて、どう攻めていこうか。相手は地面すれすれのフォークボールすらヒットにしてしまう天才。ここは開き直って得意球で勝負だ)
鶴田は初球に外角低めのスライダーを要求した。
(何投げても打たれそうだな。でも清村兄ならホームランの心配がないだけ気楽に投げられる。当たって砕けろだ。全力で抑えてやる)
白田が投じたスライダーは、この日一番のキレのある変化を見せた。天才清村兄と言えどもこの球を完璧に捉えることは難しい。そう思わせるほどのスライダーだったのだが、清村兄はその球を打ちにはいかなかった。かといって見逃した訳でもない。清村兄はセーフティーバントでその球を3塁方向のファールラインぎりぎりのコースにうまく転がしたのだ。
(絶対刺す!)
三塁手福山は初回に清村弟の打球を取れなかった汚名を返上するためにも必死にダッシュして素早く一塁に送球した。守備のチームとして有名になった船町北の三塁手レギュラー務めているだけあって、福山の一連の守備動作は完璧だった。並みの選手ならアウトになっていたことだろう。しかし、相手は並みの選手ではなかった。
「セーフ!」
船町北は、2アウトながらも一番塁には出したくないランナーの出塁を許してしまった。
123456789
船町北 010
龍谷千葉 10
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