第33話 船町北VS龍谷千葉⑤
「山田先輩、うまくいきましたね」
「いやー緊張した。意外といけるもんだな」
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西暦2016年。3月25日。龍谷千葉高校野球部の新入部員達が初めて練習に参加したその日。清村弟は全体練習を終えるや否や真っ先に山田の元に向かった。
「山田先輩、ちょっといいですか?」
清村弟はキャッチャーとして龍谷千葉高校の投手陣を事前に研究する中で、山田の致命的な弱点とその改善策をすでに考えていた。
「山田先輩はランナーを置いたとき、ストレートの時以外ではほぼ確実に盗塁を決められてしまいます。そこでなんですが……」
清村弟の考えた作戦はこうだ。まずランナーを出してしまった場合、スローカーブは極力投げず、スローボールかストレートの2球種のみで勝負する。そしてスローボールの時にランナーがスタートを切った瞬間、清村弟は山田にサインを出す。そのサインが出ると、山田はスローボールから急遽ストレートを外角高めに外して投げるというものだ。
「うーん……理屈はわかるけど、スローボールを投げ始めてから急にストレートに切り替えるってめちゃくちゃ難しくないか?」
「握りは同じですし、不可能じゃないですよね。早速練習しましょうよ」
「お前な、簡単に言うなよ。ピッチャーっていうのは……」
「練習しましょうよ! 練習! 練習!」
「俺の話を聞……」
「よっし決まり! じゃあ次の春季大会までにはモノにしましょう!」
「しょうがねえなあ」
こうして山田は、清村弟によって半ば強引にこの盗塁対策の練習をさせられることになった。
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清村弟と山田は、他の高校に研究されないよう格下相手の試合ではこの作戦を使わずにあえて走らせてきた。2人がこの作戦を使うのは、あくまでも負ける可能性がある強敵限定。つまり星に対してこの作戦を使ったということは、船町北高校野球部を負ける可能性がある強敵と認めたということになる。
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